トキエア、ホンダは地方空港を救えるか、人口減と脱炭素も待ち構える
新潟空港を拠点とする地域航空会社のトキエアが2022年末、就航する見通しです。ホンダも2023年から「ホンダジェット」を使って熊本県を軸にした運航サービスを開始します。
事業や経営形態は違いますが、地方の空港を結ぶ地域コミューターが再び活発になるかもしれません。過去、大手航空会社や自治体の支援を受けながら事業継続をめざしましたが、旅客数の確保が難しく失速。今は人口減の進行に加え、航空機が排出するCO2も減少を迫られます。この逆風に耐え、上昇気流を捉えられるのでしょうか。
トキエアは23年に定期便
トキエアは国土交通省東京航空局に航空運送事業許可を11月以降に申請すると発表しました。使用する機材は、欧州の航空機メーカーATRの70乗りの「ATR72−600」2機。ATRはエアバスとレオナルドが共同で1981年に設立した地域航空会社向けの航空機で、90席以下の小型機に強く100か国近く輸出。日本航空の子会社を含め200以上の航空会社が利用しています。
運航はまず2022年の年末年始にかけてチャーター便を就航する見通しです。定期便は23年3月以降に札幌市の丘珠空港に就航、仙台、関西、名古屋などを結ぶ航空網を築く計画です。
トキエアのホームページには「日本の地域航空の経営に最適なソリューションを提供し、地域航空ネットワークの充実と空港を中心とした地域活性化に取り組みます」と新潟県の地域航空としての役割を強調していますが、新潟県、地元の経済界は旅客数の動員や補助金などを通じて支援します。
ホンダは2023年にビジネスジェット機「ホンダジェット」を使って日本ならではの移動サービスを開始するそうです。ホンダジェットを降りた後は、車かバイクで目的地に向かう手配も整えます。飛行機を使った移動の利用はすべてをセットでまとめ上げてスマートフォンのアプリなどで一括して予約や決済ができるようにします。利用コストは100万円単位になるようですが、時間や体力を節約するために活用するお客は少なくないはずです。
ホンダは熊本を拠点 タクシーなどと組み合わせ
ホンダがジェットを使った運送事業をどこまで拡大するのかわかりませんが、ビジネスジェットで世界的ヒットとなっている「ホンダジェット」を日本で普及させる布石する思惑があります。地方空港は定期便が少なく、その利用拡大は地域にとって至上命題。ホンダと協力したい空港、自治体が続くと思います。
ただ、客層は限られます。サービスが高価格でも利用できる富裕層、企業の社員や個人事業主らの出張需要に期待しているはず。運航はホンダがグループに航空会社があるので、機体の運航はグループ内で行うようです。
日本の地域航空は厳しい経営状況が続いています。経営規模は離島を結ぶ航空会社、北海道や九州と東京・関西を結ぶ広域航空と大きく違いはありますが、広域の代表である北海道のAIRDOと九州のソラシドエアは2022年5月に共同持ち株会社を設立する発表しています。コロナ禍もあって両社とも赤字経営に苦しんでいます。
AIRDO、ソラシドエアに限らず地方空港を拠点にする航空会社は地元の自治体と一体となって事業採算を維持しているのが実情です。
仕事柄、コミューターは海外、日本でよく利用しました。日本の場合、近距離の運航は事業維持に苦しんでいるようでした。20年ほど前、広島と松江を結ぶコミューターを利用した時です。2年間で2度も突然の欠航に遭いました。出雲空港から広島市までタクシーで送ってもらいましたが、その経費を考えたら利益は出ません。その後、この路線は廃止されました。
地方空港は過剰
日本は狭い国土にこんなにも必要なのかというほど多くの空港があります。山形県に2カ所も空港があります。空港数の過剰感は1980年代から批判され続けていますが、高速道路と空港のない県は見っともないという声に押され、政治力で航空網ができています。瀬戸内海に3つの大橋が建設された論理と同じです。
しかし、人口減は止まりません。日本全国には北海道、九州も含めて新幹線と高速自動車道がきめ細かい網の目に張り巡らされてます。航空会社は新たな経営課題にも直面しています。脱炭素です。CO2を大量に排出するジェットエンジンは欧州で強い批判を浴び、運航範囲の規制が厳しくなっています。バイオ燃料など代替燃料のSAFの実用化が始まっていますが、運航コストが増えるのは確実です。
率直に入ってトキエアとホンダは事業の趣旨は違います。トキエアは地域の振興。ホンダジェットはビジネスジェットの可能性。一緒に議論するのは相応しくありません。しかし、どちらも地方、地域の旅客需要をどう掘り起こし、維持するのかが問われます。地方の過疎化が進めば、どちらも事業としては沈み、苦しみます。ホンダはともかくトキエアの将来は楽観できません。