北海道で電力の地産地消 豊田通商が風力発電、送電網も
北海道稚内市は、日本の最先端を2つ持つ街です。まず地形として日本の北部、最先端の都市。こちらはだれもが知っている事実です。しかし、もうひとつは知られていません。電力の地産地消です。
稚内は消費電力の9割を地産
稚内市には風力発電施設が74基あります。国のエネルギー研究機関のNEDOから譲り受けたメガソーラー発電所もあります。これらの施設の発電量は、稚内市の消費電力の約9割に相当する規模です。家庭から排出される生ごみを利用したバイオエネルギー、雪や氷の冷熱を利用した貯蔵施設などを自然エネルギーをフルに市民生活に注ぎ込んでいます。将来は100%をめざしています。
「地域社会全体で環境負荷の低減を図り、人と地球にやさしい環境都市を目指す」と掲げている都市は多いのですが、稚内市のようにゴールが見えている街はほとんどありません。
そんな稚内市にとって喫緊の課題があります。「送電線網なんだ」と地元経済人は明かします。
風力発電の適地であり、風力発電への新規参入計画あるいは、増設を検討している企業があるにもかかわらず、送電網の整備が間に合わないのです。
再生可能エネルギーの利用が広まっても、電力会社から全量買い取り活用するためには、送電線の系統連携が充実してないといけません。太陽光や風力ばかりが話題になりますが、実は送電線のネットワークが普及のカギです。
再生エネ普及には送電網の充実が不可欠
そこで注目する計画が動き始めています。豊田通商が北海道北部で風力発電と送電網を建設します。国の補助金を活用して、送電網や蓄電池を合わせて開発。発電能力は原子力発電所0・5基分に相当する54万キロワットで道内の風力発電量は約2倍に増えます。
2023年から稼働。風力発電の規模は国内最大級で、発電設備と送電を一体で整備し、再生可能エネルギー普及の課題である送電網の強化に対する一つのモデルになります。
豊田通商の計画を報じた日本経済新聞によると、風力発電を整備するのは北海道北部の稚内市から幌延町にまたがる地域。土地が広く、風力発電に適した強い風が吹きます。
豊田通商の子会社で国内最大の風力発電事業者、ユーラスエナジーホールディングス(東京・港)が45・7万キロワット、コスモエコパワーと新電力のLooop(ループ、東京)が計8・5万キロワットをそれぞれ発電します。送電線はおよそ80キロになり、北海道電力の送電網と連結します。
送電線で稼ぎ、投資を回収
送電事業は国が認可する形で大手電力以外でも参入できるようになりました。ユーラスは発電設備の容量に応じて発電事業者から送電網の利用料を受け取り、借り入れなどで投じる資金については長期間かけて回収。将来は蓄電池にためた電力を卸電力市場の価格が高騰した際に売るといった施策を通じ収益力を高めることも検討しています。
政府は30年度までに電源構成に占める再生可能エネルギー比率を40%近くまで引き上げ、今よりもほぼ倍増させる目標を掲げています。ただ風力発電や太陽光発電は天候によっては出力が大きく上下するのは避けられません。
「調整弁」となる蓄電池の整備が遅れていることに加え、風力発電所などから電気を送るための送電網の能力の充実が指摘され続けていました。豊田通商を持ち上げる考えはありませんが、後に続く企業、投資計画を期待したいです。