次代の技術を見極める目を失う

世界のマネーが集まるのはDisruptor、日本は「孫正義」だけ 

 東証市場がプライムなど3区分に新しく再編されるのは、世界からマネーを集めるのが狙いです。日本の優良企業、あるいは将来大化けするであろうユニコーン企業に対する投資を増やし、日本経済に再び活力をもたらすと期待しているからです。

世界から投資に値する企業が日本に何社あるのだろう

 冷静に日本の企業を眺めてみましょう。そもそも世界からマネーを集める欲望を持つ経営者が何人いるのだろうか。資本主義の根幹は企業家の欲望です。巨額資金を投じて開発、生産するプロジェクト、時には妄想といわれても実現しようとする経営者を最近、日本で見かけません。

 表現は古いですが、大風呂敷を広げている経営者の名前が浮かびますか。世界の投資資金を元手に成長をめざす強い欲望を持った会社がむしろ次々と登場して欲しいと思うぐらいです。

 話題だけで思い浮かぶのはZOZO創業者の前澤友作さん。オンラインショップの独創的なビジネスモデルを起業して巨万の富を手に入れました。2019年にヤフー(現在のZコーポレーション)に売却した後も、ネット上で希望者にお金を配ったり、宇宙飛行士として地球外に飛び出したり。バスキアなど高額作品の絵画コレクターとしても有名です。ファンドも設立していますから、起業家の応援は続くのでしょう。

 楽天の三木谷浩史さん。楽天の創業間もない頃、ネット上に開設した「楽天市場」は当初、誰も来客がなく「幽霊市場」と評され、七転八倒している姿を知っているいますから、ネット通販のみならず銀行・証券、そして携帯電話にも手を広げ、独自の経済圏を構成するコングロマリットにまで膨張した経営手腕は素晴らしいです。現在、最後発で進出した携帯電話事業は大赤字を計上していますが、対外的に微塵の焦りを見せないのは創業期の厳しさを体験しているからでしょう。

 三木谷さんはネット通販ではアジアで最先端を切ったという思いが強いだけに、中国アリババのジャック・マーにサクッと追い抜かれた時は相当くやしかったはずです。「日本のアリババ」と紹介された時はホント、嫌な顔をします。でも中国と日本の国内市場を比べたら、しかたがない結果です。積極的な企業買収を展開していますが、携帯電話事業の巨額赤字にも先行きに自信を見せているぐらいです。世界からのマネーに頼る気持ちはさほど感じられません。

米国は日本の経営者で「孫正義」以外、興味がない

 10年ほど前、米国の経済ニュース放送会社CNBCの番組製作責任者と雑談した時、「日本人で誰を取材したいか」と聞いたことがあります。彼は「孫正義さん」と即答しました。理由は「日本で唯一、ディスラプター(disruptor)と呼べる経営者だから」。孫さん以外は誰?と聞いたのですが、う〜んと唸ったまま。彼の目には「孫さん」以外は映っていませんでした。

 Disruptorはこれまでのビジネス常識を打ち破る技術開発や経営哲学で全く新しいビジネス領域を創造する経営者です。アップル、グーグル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、そしてテスラを生み出した創業者たちです。彼の目に狂いはなかったです。孫さんのその後の活躍はみなさんがご存知のとおりです。

 孫さんもソフトバンク創業のころから横目で眺めていました。電子翻訳機を開発して得た元手からして当時はまだ星雲状態だったコンピュターやゲームのソフトを販売。同じ頃、アスキー創業者の西和彦さんの方がビル・ゲイツと並ぶほどの評価を得ていましたが、米国のイベント会社コムデックスを買収した頃から存在感が増してきました。

 企業買収を繰り返すだけの所詮投資家、事業家ではないとの批判を浴びる時もありました。しかし、ルパート・マードックや東京電力などビックネームと手を組む派手な事業展開がどんどん「孫正義」を膨張させました。サウジアラビアと10兆円を超えるビジョン・ファンドを創設した時も驚きましたが、トランプ氏が米大統領に当選した直後に駆けつけて握手を交わすシーンにはホント驚きました。

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