次代の技術を見極める目を失う

世界のマネーが集まるのはDisruptor、日本は「孫正義」だけ 

 その孫正義さんにも逆風が吹き始めました。2022年3月末に英国の半導体設計会社「アーム」の未上場株を担保に1兆円を融資受けるとのニュースが流れました。当初見込んでいたアーム上場による資金調達を断念するはめに追い込まれたため、苦肉の策として捻り出した奇策です。錬金術にも見えるソフトバンクグループの財務内容を考えたら、1兆円の融資は焼け石に水のような印象を受けます。

 なにしろ2月に発表した2012年10月ー12月期の純利益は290億円。前年同期実績が1兆円超の利益ですから赤字同然です。ビジョンファンドの投資収益が不調だったようですが、それよりも打撃だったのはアームを米エヌビディアに売却する計画を断念せざるをえず、上場計画も含めた資金計画の大きな狂いが孫正義の錬金術そのものにも陰りが出たという見方もあります。何事にも前向きな孫さんが「冬の嵐の真っ只中」とコメントしているぐらいですから、たいへんそうです。

 日本にはミドリムシのエネルギー源転用、無人運転、人工知能などで世界でも頭抜けた新興企業がまだまだあります。しかし、残念ながらベンチャーとして登場する会社の多くはいわゆるGAFAが構築したビジネスの舞台でお金を稼ぐ踊り手の一人に過ぎません。

 もちろん、トヨタ自動車はじめ世界でビジネスを展開している日本企業は数多あります。でも、彼らは資金調達に困っていません。市場を通じてあえて資金を調達する需要がありますか。その時はむしろ経営危機寸前と受け止めれてしまいます。

 日本の企業は巨額の内部留保を抱えています。これが問題になっているぐらいです。しかも、米国などが金利引き上げに転じたにもかかわらず、日銀はゼロ金利政策を継続しており、資金はジャブジャブです。

次の破壊者を生み出す政策と土壌の創設が急務

 世界から投資資金をかき集めるといっても、世界が注目するDisruptorが「孫正義」に続かない限り、東証のプライム市場は世界の投資家にとって株式ポートフォリオの一部として活用される程度で終わってしまいます。第二、第三の「孫正義」が続く政策とビジネスの土壌を創設するのが急務です。東証の新たな区分改革は、はからずも日本はDisruptorを輩出できないビジネス土壌であることを露わにしてしまったようです。

関連記事一覧

PAGE TOP