若冲、抱一、カメラ撮影OK 秀逸!三の丸尚蔵館 収蔵品が身近に

 とても感激しました。皇居三の丸尚蔵館です。学生の頃から美術館、博物館巡りで好きで、日本でも海外でも訪れた先にあればできるだけ立ち寄っていますが、皇居三の丸尚蔵館は初めてでした。目当ては伊藤若冲の動植綵絵。2024年11月に開館30年に迎えるのを機に「皇室のみやび」をテーマに収蔵品が4期に分けて展示されており、動植綵絵も全30幅のうち16幅を4回に分けて公開されていました。

若冲の動植綵絵を公開

 訪問時の公開作品は「老松孔雀図」「芙蓉鶏双図」「諸魚図」「蓮池遊魚図」。若冲の作品で際立つのは、やはり鶏でしょうか。画面いっぱいに凝縮された極彩色が鶏の鶏冠、目、羽を描き出し、周囲の花草と一緒に立体感を演出します。仮想空間で3次元映像で体感させるVRゴーグルなどは芙蓉、いや不要です。というか、当時の仮想空間を創り出していたのでしょう。

 若冲の作品はどれを見ても感嘆、ため息、笑いが止まりません。大胆な構図、信じられない精緻な筆致、緊張感が漲る構図、それていて必ず絵図からこちらを見入る若冲の視線。「私は誰でしょう?そしてあなたは何者?」と問いかけているといつも感じます。

柿に小禽図

酒井抱一の筆遣いと空白美に酔う

 若冲と並んで酒井抱一の花鳥十二ヶ月図のうち4幅が展示されていました。「二月 菜花に雲雀図」「三月 桜に雉子図」「十月 柿に小禽図」「十一月 芦に白鷺図」」。全身すべてのエネルギーを注ぎ込んだかのような若冲の作品と違い、空白美を使いながら、季節の一瞬を削りだしています。

 脱力しているわけではありません。筆の一筋、淡い色彩、花と鳥の距離感全てが計算され、筆の端端に若冲に劣らぬ緊張感を覚えます。同じ琳派の流れを汲みながらも、若冲と抱一は一見全く異なる画風に見えますが、日本の美しい自然を洗練された筆遣いで私たちに伝承してくれています。二人の作品を並べて展示した三の丸尚蔵館の学芸員の素晴らしい演出力に脱帽します。

「若冲だけじゃない」はカメラ撮影

 感激はもう一つあります。カメラ撮影OKでした。ニューヨーク近代美術館ではピカソやモネの作品でも撮影OKですが、日本は撮影禁止の美術館が多く、展示会の感激を身近にできない時もあって正直とても残念でした。最近はカメラ撮影を認める美術館が増えており、うれしいです。もちろん、フラッシュを使わないなど細心の注意は必須です。

 今回の展示会はOKでした。展示作品が入場者の列で見えないという混雑さではなかったので、お気に入りの作品をカメラに収める人が多数いました。もちろん、私もその1人です。三の丸尚蔵館のスタッフの方にお聞きしたら、「いつも撮影OKというわけではなく、展示会ごとに認めるかどうか検討している」と説明していました。

閑庭鳴鶴・九重ノ庭之図刺繍屏風 髙島屋呉服店

学芸員の演出に拍手

 「皇室のみやび」のホームページでは展示会の見どころとして3点を挙げ、その最後は「若冲だけじゃない!明治・大正・昭和の天皇皇后の日常をしのばせる品々など、初公開となる作品も!」とありました。その一つ、昭和の大礼をお祝いする作品として制作された「閑庭鳴鶴・九重ノ庭之図刺繍屏風 髙島屋呉服店」はただただ見惚れてしまう美しさです。

 展示作品はいずれも特級品ばかりです。個人的には、「カメラの撮影OK」こそが「若冲だけじゃない!」と誇れる魅力と感じました。三の丸尚蔵館の収蔵品がとても身近に感じられる大ヒットです。拍手を送りたいです。

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