before and after

謎かけです。「日本銀行とみずほ」とかけて・・・ その心は、水と空気です。

みずほ銀行が8月20日、今年で5度目となるシステム障害が起こしました。バックアップへの切り替えがうまくいかず、店頭での外国為替取引などに遅延が発生したそうです。

「みずほがまたか」と思ったら、なぜか日本銀行が連想され戯言が浮かびました。こんな謎かけはどうですか。

「日本銀行とみずほ、とかけてなんと解く?」

「水と空気と解きます」 その心は?

「毎日の生活に欠かせませんが、存在感が無いので時々大事なものだと確認しないと忘れてしまいそうです」

次のオチはちょっと無理がありますか。

「事故や失敗があると、存在や大事さを痛感します

事故などがないと存在感を痛感しない・・・

企業ニュースを軸に何十年も経済と向き合ってきたので、ドル円などの為替相場や銀行の資金管理などを横目で注視する毎日を過ごしました。日銀やみずほなどの巨大銀行、地銀、海外の金融機関も数多く取材しました。先ほどの謎掛けは、長年の蓄積した思いからふっと生まれたのです。

みずほのシステム障害はもう説明不要ですよね。6月に第三者委員会による調査報告書について「みずほを多少知っている人なら、内容を読んでも誰も驚かない」という趣旨の原稿を書きました。あれからまだ2ヶ月しか過ぎていません。にもかかわらず、みずほトップの会見内容、障害がわかってからの対応など第三者委員会の調査報告書に指摘されたことがなぞるように起こり、安直に制作した再現ビデオを見せつけられているような気持ち悪さを感じます。

 偶然ですがコンピューターの画期的な国産基本ソフト「TRON(トロン)」を考案した坂村健さんの最新著作「DXとは何か」(角川新書)を読んでいたら、まさにみずほの障害システムを連想させる下りがありました。

「日本の真のデジタル化は、RPAを捨てる決断をしたところから始まる。(中略)RPAのようなレガシー(遺産)を弥縫策で継ぎ接ぎしたようなシステムが、ゾンビのように様々な部署に残るだろう」と。RPAとはパソコンで行われる日常業務を自動化させることを意味する「Robotic Process Automation」の頭文字をとった略です。多種多様な業務を自動化すれば大幅な業務作業と時間を削減できる効果を期待できますが、それは業務の処理数を簡略化しただけ。政府も民間も大騒ぎしているDXの本筋とは全く外れていると指摘します。逆にそれがシステム全体の足を引っ張る存在になると続けます。

DX(Degital Transformation)は企業でいえば経営や社員の業務に対する意識と作業を根本から改革すること。業務処理数を削減するRPAの合理化効果に目を奪われてしまえばおしまい。過去の成功体験をまず捨てることがキモです。坂村さんは継ぎ接ぎだらけのシステムを「スパゲッティ・プログラム」と呼びます。一部を手直しすると予期しない影響が発生し、システム全体に多大な影響を及ぼしてしまう。みずほのシステム障害はまさに合併前の第一勧銀、富士、日本興業銀行がそれぞれ使用した基幹システムをそのまま引き継いだ結果で、みずほのシステム「MINORI」の内部はまさにスパゲッティが絡み合うように弧を描く電子が飛び交う複雑怪奇な宇宙が創造されているのかもしれません。

技術的な議論は他に譲るとして、このスパゲティー状態を解きほどくのはトップの使命です。システム設計など詳細な技術的な全体像を熟知することは専門家に任せるとしても、システムが稼働する本来のミッションとは何か、どのようなセキュリティー対策を常に考え、もし問題が発生したらどう対処するのか。その根幹を理解していなければ経営者の資格を失うのがDXです。要はシステムの開発・運用の現場と常日頃コミュニケーションできるかにかかっているのです。

「システムについては全くの素人なので、皆さんにお任せします」。日本の会社トップからたびたび聞くセリフです。責任は経営トップが負うと言いながら、システム開発を丸投げしているわけですから、問題が発生した時にどんな指令をどこに出すのか、顧客にどう対応するのかが分かるわけがありません。素人ですと発言した時点でもともと責任を負う気があるとは思えませんし・・・。みずほのシステム障害が発生した際、みずほの頭取は責任を負って交代すると何度も発言していますが、なんのことはない、何度交代しても同じ迷走を繰り返すことになります。みずほフィナンシャルグループは世界15位の巨大金融グループです。みずほが迷走すれば、日本経済も迷走し、私たちの生活にも大きな支障を生みます。「もういらない」とは言えません。

みずほの惨状を妄想していたら、日銀の果てしない迷走が目に浮かびました。日銀の黒田東彦総裁は大胆な金融緩和を実行し継続しています。2013年3月就任した翌月4月、金融政策決定会合で2%の物価目標を2年程度で実現するために日銀が供給するマネタリーベースを2年間で2倍にすると発表。以来、「物価安定目標の2%をめざして大規模な緩和を当分続けていく。それに尽きる」。記者会見で繰り返し繰り返し発言しています。

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