藤田田の眼光が蘇る ロッテリアを終始無視、モスバーガーには本気、結末が見えていた
不振の原因はいろいろありますが、「ハンバーガー・チェーンの経営から生み出す価値とは何か」を見失っていたことに尽きます。ロッテグループの一事業として展開していたので豊富な資金や人材に不足はありません。価格や新製品の話題性でもライバルに遜色はありません。足りなかったのは、消費者がわざわざロッテリアに出向いて飲食する価値があるかどうかを提示できなかったことです。
ロッテリアを食べる価値創造が欠けた
複写機を利用した時、原本とコピーを見比べてください。どちらが鮮明ですか。最近の複写機は高性能ですから差はほとんどありませんが、原本とコピーを見比べる気持ちが明らかに違います。一見、同じハンバーガーやドリンクに見えても、手に持って食べ、友人らと話す時間の楽しさ。「今、マクドナルドを食べている」という実感がおいしさを倍加させます。
モスバーガーはファストフードの看板を捨て、「他が真似できないおしいしハンバーガー」を追求しました。創業者の櫻田慧さんは言い切っていました。「お客さんに待っていただくのは申し訳ないが、どこよりもおいしいハンバーガーが食べられるよう全身全霊を込めている」。
モスバーガーはファストフードを否定
店舗の立地も土地代が安価な場所を選ぶので、決して人通りが多くはありません。住宅街の一角にあることも珍しくない。結果としてマクドナルドとまともに競合することはなく、モスバーガーの味に魅かれて訪れるリピーターが増えていく。
藤田田さんはモスバーガーのファンがマクドナルドに見向きしなくなるのを恐れていました。おいしいハンバーガーが食べられるなら、待ち時間が長くても我慢できる。ファストフードの真髄を否定するからです。マクドナルドがモスバーガーを打ち負かそうにも、消費者はどちらにしようか選択に迷うことはありません。マクドナルドから見たら、ロッテリアは無視できても、モスバーガーには無視されている構図です。
藤田、櫻田の2人も時代を見失う
しかし、藤田田さんも櫻田慧さんも、自身の経営信念を貫徹できませんでした。高度成長を終え、そしてバブル経済の崩壊を経た日本経済の消費行動は、大きく変わります。強烈な個性を放ち、ファストフードを革新した藤田、櫻田のお二人でも時代に取り残されます。ロッテリアが生き残る道を見失うのは当然でした。