MAZDA6 広島じゃけぇ、車創りに迷いはない カープとロータリーは永遠!

  わかっていました。マツダが諦めるわけがないことを。

ロータリーは魂、勇気をふり立たせる

 ロータリーエンジンが11年ぶりに復活しました。過去、倒産寸前の苦境を何度も経験し、米フォードにあごで使われる苦汁も飲みました。経営危機を招いたロータリーエンジンは消滅して当然。そう理解する人が多かったでしょう。

 ところが、何度も社長が交代しても、マツダからロータリーエンジンは消えません。トヨタ自動車、日産自動車を見てください。社長が変わるたびに経営の方向が変わります。ホンダも創業者の本田宗一郎を口にしながら、変節を繰り返します。

 マツダは変わりません。ロータリーエンジンはマツダの魂。現場の思いを伝える通奏低音として流れ、困難を乗り越える勇気を奮い立たせていました。

発電用で11年ぶりに復活

 マツダは2023年1月にベルギー・ブリュッセルで開催するモーターショーで、ロータリーエンジンを発電機として使用する新型電気自動車(EV)「MX-30」を公開します。かつてのように疾走を生み出す原動力としてではなく、発電用に活用してバッテリーに充電します。1回の充電と給油で400キロ程度を走行できるそうです。

 過去のロータリーエンジン車の燃費の悪さを考えたら、格段の進化です。ベース車のMX-30EVは35・5kWhのバッテリーを積み、走行距離は約200キロ程度。ロータリーの発電補給を加えればおよそ2倍になるのですから、欧州のEVとも競争できます。3月に発売予定です。

 ロータリーエンジンを搭載した最後の車は「RX-8」。2003年から2012年まで生産されました。発売直後、試乗したことがあります。直列やV型のエンジンと比べ、加速感が全く違います。空気の壁を破ってワープ空間に突入する爽快さ。ずっ〜と走っていられます。

 しかし、燃費の悪さはちょっと凄すぎました。RX-8はだいぶ改善されていましたが、その前のモデル「RX-7」で首都圏の高速道をフカしていたら、ガソリンタンクがあっという間に半分に。冷や汗をかいた思い出があります。

 ロータリーは他のエンジンを圧倒する魅力を兼ね備えていながら、退場を余儀なくされました。しかし、広島本社の宇品工場ではしっかりと生き続けました。過去販売した車のメンテナンスを理由にロータリーの神髄である繭形に仕上げる加工技術はベテランの技術者によって伝承され、最大の弱点である燃費改善の努力は続いていました。

 以前、かなりしつこく取材を申し込みましたが、熟練の加工なのでとても見せられないと断られたことも。その代わり、ロータリーエンジン開発を記念したレプリカをいただきました。とても貴重なものです。

水素との相性も良い

 構造上、燃費改善に限界があるのはわかっています。そこで発想を転換。発電用として活用することにしました。燃料は水素。マツダの技術陣によると、ロータリーエンジンの構造は着火しやすい水素と相性が良いそうです。ただ、水素を燃料として利用する周辺技術やインフラはまだ実用化に時間がかかりそう。そこで2020年11月に発表した中期経営計画では、ロータリーエンジン技術を活用したマルチ電動化の考えを打ち出しました。その第一弾が「MX-30」のEVで実現したのです。

 ロータリーエンジンは1957年、ドイツで開発されましたが、量産化に成功した地は日本の広島県。1967年5月、「コスモスポーツ」が誕生し、そのUFOのようなデザインとエンジン性能に自動車ファンは魅了されます。その後の石油危機でロータリーは省エネ時代から取り残され、マツダは経営危機に襲われます。それでもロータリーエンジンを手放しません。

 社運を賭して開発した当時のリーダー、山本健一さんは1984年に社長に就任します。当時も経営状況は決して芳しくありませんでしたが、技術部隊のトップである山本さんを社長に据え、ロータリーに象徴される技術開発がマツダの魂そのものである姿勢を対外的に示します。

 確かに技術がすべてを圧倒する会社です。フォード傘下の時でも、技術的に評価できない場合はフォードとの共同開発を見送り、独自の車創りに邁進します。2シーターの車が売れていない時に「ロードスター」を発売、世界的ヒットをかっ飛ばします。そして今、これからEVの時代が到来しようというのに、エンジン車を相次いで発表。専門家はもちろん消費者からも支持され、異例のヒット車が続きます。

「RX-9」はいつ登場?

 そんなマツダがロータリーエンジンを発電用だけで満足するわけがない。生産中止となった「RX-8」に続く「RX-9」が登場する日も近いでしょう。

 まるで広島カープへの溺愛と同じ。負け続けても「カープ、カープ」と連呼しながら歌い、優勝を信じる。そして優勝は実現します。なぜマツダもロータリーを溺愛するのか。本社が広島県にある自動車メーカーからでしょうか。マツダのみなさんと会うと、熱い人が多いことに気づくはずです。マツダに惚れているのです。地元の部品メーカーもマツダのことが心配で、心配でたまらない。愛想を尽かすなんて、とんでもない。

負けていても、いつかは勝つ、乾杯!

 負けが続いても「明日は勝つ」と乾杯、勝てば「明日も勝つ」と乾杯。「ロータリーもいつかは復活する」。

「広島じぇけぇ」、カープとマツダを溺愛する広島に乾杯。

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