日産・ルノーの秘密契約 身売りのルノーを日産が自らの身売りで救済 稚拙な外交力が露わに
日産とルノーが提携に至るまでの経緯はこれまでも新聞やテレビ、雑誌、書籍などで描かれています。当サイトの「私の産業史」でも書いており、現時点では提携に至るまでの途中経過で一時停止してています。これから先について”筆”が進まないのは、「どうして、あんな結末で終えてしまったのだろう」という情けない思いが繰り返し蘇るからです。20年以上すぎた今も変わりません。
発端はルノーの身売りから始まっています。ところが結論は日産自らを身売りしているのです。しかも、舞台裏を知る身から見れば、日産が苦境から抜け出せないルノーを事実上救済しています。千億円単位の資金供給で助けてもらったから文句はいえないかもしれませんが、自動車メーカーにとって資金以上に重要な開発・生産など生命線ともいえる技術をルノーに吸い取られています。ルノーとの提携に奔走した当時の日産経営陣を知っているだけに、なおさら残念は思いが募ります。
ルノーの身売りが発端、結末は日産の身売り
当たり前ですが、最終的な経営責任は当時の経営者たちが背負うものです。しかし、見逃せないのはルノーの背後にはフランス政府がどっしりと構え、シナリオを描いていたことです。ルノーは国有から民営化されたとはいえ、フランスで最大級の雇用を抱え、国が大株主の地位にあります。事実上国有企業のままです。同国経済の大黒柱です。倒産する事態はあってはならない会社です。1990年代、ルノーは経営に行き詰まり、身売りの噂がまことしやかに自動車業界でささやかれます。日本でもトヨタ自動車や富士重工業(現スバル)などに持ちかけられたようですが、欧州メーカーの救済は経営責任のみならず欧州の政治力や雇用問題との交渉が待っているだけに、どこも手を出しません。
一方で日本でも日産が赤字経営が続き、倒産間近の声が密かに広がっていました。万が一があれば何兆円にものぼる負債総額だけでなく、深刻な雇用問題、系列企業の連鎖倒産などを発生するため、日本政府も日産の救済に走ります。日産とルノーの資本提携に至るまでの道のりは紆余曲折ですが、提携劇の舞台裏では日本、フランスの両政府が両社の倒産を回避し、事実上の統合を実現するために奔走していました。
にもかかわらず、基本契約はフランス側に優位に出来上がりました。フランス側から日産へ数千億円の資金供与がされたからと理解する向きもありますが、国有企業のルソーを救済するためならフランス政府にとってそんなに重い負担ではなかったはずです。日本側は日産を救済するためなら、何でも飲むという厳しい立場に追い込まれいたとは思えません。日産の当事者責任を見落とすわけにはいきませんが、どうして日本政府がフランスに有利な契約内容を押し返さなかったのか不思議です。わかりません。取材不足で申し訳ないです。
くすぶる不満はゴーン氏のレバノン逃亡の結末に
その理不尽な契約は日産社内に消えそうで消えない炭火のようにフランス、カルロス・ゴーン氏に対する不満が燻り続けます。「いつかは、追い出してやる」。経営再建のスターとなってメディアに登場するゴーン氏、そのゴーン氏に右ならえする日産経営者たちを横目に、社内の不穏な空気は次第に一つの目標に向かって形作られていきます。20年過ぎたある時、ゴーン氏はフランスのマクロン大統領とルノーを巡る戦略について衝突し。日本政府にもフランス政府も良い顔をしていたゴーン氏はフランス政府の後ろ盾を失います。日産生え抜きにとってチャンスが訪れました。
カルロス・ゴーンの放逐。家具に隠れてプライベートジェットに乗り、レバノンへ逃亡するというアクション映画のような物語はあの不平等契約が成された時から描き始められていたのです。