北海道・ふるさとを創る1サンピラーは突然現れ消えてしまう 至宝は目の前に
人口減は地域の経済から教育、病院など社会インフラまで崩します。まさに「ふるさと」が壊れ始めています。北海道は全国でも実力トップの「ふるさと」のはずです。地域ブランド調査などで常にトップクラスです。雄大な自然、豊かな農水産物、恵まれた衣食住がそろっているのですから、観光のみならず移り住もうと考える人が多いのは当然です。先日も東京から旭川市へ移住する人とBBQを楽しみながらおしゃべりしました。
大雪山系に近い恵まれた自然に加え、教育や医療などで不安がないため、子供たちがどう育っていくのかを楽しげに語っていました。お子さんも車ですぐに行けるゲレンデでスキーの上達を目指して5月の連休まで滑りまくると張り切っていました。
ところが、ふるさと創造には高いハードルが待ち構えています。広大な北海道、そのものです。面積は東北6県プラス新潟県に相当するそうです。札幌や旭川、函館など地域のコアとなる都市から離れれば離れるほど病院や教育など社会インフラから遠ざかります。
病気など苦にならないと気張るのは結構ですが、実際の生活で教育や医療は欠かせません。「ふるさと創造」が成功するには大都市との地域連携による相乗効果が必要です。
東川町がその良い例です。旭川市と隣接するメリットを生かしながら、町自体の個性を際立てて移住者を増やし続けています。「写真の町」とのキャッチフレーズはじめ木工や食品開発に精力的に取り組み、全国に先駆けた試みをためらうことがありません。旭川空港に近いメリットを生かして、全国に東川町をブランドとして発信し続けます。
日本全体の人口が減少しているのですから、移住者の誘致はゼロサムならぬマイナスサムの中での奪い合いになります。東川町は海外移住者を誘致するため、2015年に町立東川日本語学校を設立して成果を上げています。外国人が住みやすい街ということは、北海道以外の日本人にも住みやすい街です。この視点が素晴らしいです。
先日、NHKが日本で最も移住者が多いという鳥取県の移住者施策を取り上げていましたが、とても合点がいきました。鳥取県の移住者は今では年間2000人を超えるそうで、就職や子育てなどの支援策がきめ細かい支援体制を整えているのが決め手になっています。支援策として当たり前といえば当たり前の内容ですが、見知らぬ街に住む不安を拭うのはやはり温かい助けです。
ニセコ、富良野は成功例か
北海道の成功例となると、どうしてもニセコ、富良野、トマムなどがまず浮上します。ニセコを例に見ると、オーストラリア人を中心に中国や東南アジアなど世界から旅行客が集まり、今では世界トップクラスのホテルも進出しています。土地代も日本でトップクラスの勢いで上昇しています。
地域の活性化につながっているとはいえ、「ふるさと創造」につながっているのか。外国人の土地所有や土地代の高騰、山林や水源など自然の資源破壊など歪みがすでに顕著になっています。日本人のスキー客がニセコ離れする弊害も現れ始めています。コロナ禍もあってインバウンド客の低迷も乱立した高級ホテルの経営に打撃を与えているはずです。5年前までいつまでも輝くと信じたニセコや富良野は神話から寓話になってしまうのでしょうか。