MLBを初めて体感（上）ファンと球場の一体感　野球の楽しさを再発見

　米国野球の大リーグ（MLB)を初めて体感しました。訪れたのは、シアトルの「Tモバイル・パーク」。試合は地元のシアトル・マリナーズとテキサス・レンジャーズです。時期は９月末で、残る試合は３試合。両チームともワールドシリーズに向けた前哨戦であるポストシーズンに王手をかけており、どちらも負けられない対戦です。

マリナーズ戦を観戦

　シアトルは観光で訪れましたが、野球少年の頃から不世出のバッター「タイ・カッブ」に憧れ、今は大谷翔平の大ファンです。ひょっとしたら２０２３年冬のFA行使でシアトル・マリナーズに移るかもしれません。マリナーズ対レンジャーズは観戦したい試合でした。

　試合のチケットはマリナーズファンで売れ切れ状態でした。しかし、願えば叶うものです。地元の方のアドバイスを参考に粘り強くネットで手続きをしてなんとかゲット。文字通り、喜び勇んで球場へ向かいました。市内中心部から電車で向かいましたが、乗車時間は気にならない程度。最寄り駅は球場の目の前。

試合前の時間も楽しい

　念願の大リーグ観戦チケットをゲットして興奮したせいか、到着した時間は試合が開始する午後７時１０分よりも４時間以上も前。「さすが早過ぎたか」と苦笑していたら、入場ゲートに多くの人が並んでいます。「ラッキ一」と心の中で叫んで一緒に並んでゲートを通り抜けようとしたら、係員から「あなたは球場で働いているのか？」と問われ、答はもちろん「NO」。「入場時間まで待ってください」と笑いながら押し出されました。

　球場内にはマリナーズで活躍したイチローのメモリアルコーナーなどがあるので、試合開始まで見学しようと考えていたのですが、それも無理。球場に併設されているマリナーズ・ショップに入り、お土産などを買いながら時間を潰すことにしました。ロゴ入りのパーカーや選手の名前が背中に書かれたシャツなどを選びながら、歩き回っていたら、ベテランの店員が私が背負っているバッグを見て、「これは球場内に持っていけないよ。セキュリティーのため、中身が見えるクリアバッグしか認められていない。クリアバッグを買い、バッグはロッカーに置いていくしかないよ」とアドバイスしてくれました。

　透明なクリアバッグが必携とは！全く知りませんでした。早速、購入しましたが、今背負っているバッグはどこに置けば良いのか。球場内にロッカーがあるのかと思ったら、通りを隔てた露店に「LOCKER」という大きな看板が掲げられていました。試合終了から１時間後までに預かっていると言うので、料金を支払い、お願いします。

イチローを讃える風景があちこちに

　チケットは内野席でしたが、観光を兼ねて球場周辺を歩いたので入場ゲートは左翼席側。すでに多くの家族が開門を待って並んでいました。ペイントなどで描かれたイチローの姿があちこちにあります。やっぱりうれしいです。観客のほとんどは、マリナーズの選手やチームの名前が書かれたユニフォームやパーカー、ジャケット、帽子を身につけており、「みんなで応援し、楽しもう」というオーラーを拡散しています。待ち時間もワイワイ騒ぎ、この特別な時間を思いっ切り楽しもうと考えているようです。野球観戦は家族との楽しい思い出作りなんだと痛感しました。

　入場ゲートが開き、場内に入るとすぐにスタッフからタオルを渡されました。青い下地に黄色で「GO MARINERS」と織り込まれています。どう使うのか不明でしたが、試合が始まったらすぐにわかりました。試合観戦に欠かせない、とても重要なグッズでした。

　グランドでは選手の練習がほぼ終わり、整備のスタッフがダイヤモンドや打席周辺を丁寧に白線を引き、水をまいて、これから始まる熱戦の舞台に磨きをかけています。試合が始まるまでの時間は、ビールや食事の買い出しタイムです。観戦の必携アイテムである生ビールの売り場はとても長い列が出来上がっています。待つのは嫌だったので、見回すとちょうど誰もいないコーナーがありました。ビールとフィッシュ＆チップスを注文。席に戻り、準備万端です。

　試合が始まるまでにさまざまな記念品の伝達式などをが続き、観客席も満席になっていきます。国歌斉唱が始まり、もう開始寸前となった時、上空にはジェット戦闘機が隊列を組んで通過。球場内は歓声が上がり、一気に気分は沸騰。

観客は応援のタオルを振り、球場内は熱気が充満

　ホームチームのマリナーズにとって絶対に負けられないゲームが始まりました。ドーム球場の屋根は閉められ、寒いぐらいだった気温が熱気に変わり始めました。球場の巨大な観客席をぐるりと囲みように取り付けられている巨大な電光掲示板には次々と観客に対し「声を出そう」など選手を鼓舞する文字が踊ります。観客は席を立ち、入場の際に渡されたタオルを手に頭上高く振り回します。観客の大半はマリナーズファンですから、球場すべてでタオルが振り回され、声高く応援します。

　野球観戦しながら、こんなに球場内が一体化した瞬間を体感したのは初めてでした。久しぶりに「野球って素晴らしい」と感動しました。