北の国から 昭和・平成・令和が氷結する富良野、新たなブランド創造の時
雰囲気の良い洋食レストランを見つけました。外観はログハウス風。木組みのガラス戸から見えるテラスには海外から訪れた観光客が詰めかけ、ほぼ満席。運良く空席があり、店内に入ったら日本人は私たち家族だけ。
レストランの日本人は私たちだけ
メニューはピザやハンバーグ、フレンチポテトなど定番が並びます。北海道のソウルフードの一つ、エスカロップも。知っていますか?バターかケチャップを混ぜ合わせたライスにポークカツをのせ、その上からドミグラスソースをドバッとかけています。根室が発祥の地だそうです。
店内を見渡すと、多人数のテーブルには必ずといって良いほど山盛りのフレンチポテト。おしゃべりの合間にパクパク。ビールかワインを片手に、さあ夕食を楽しむぞとスイッチを入れているようです。スタッフはネイティブ並みの英語で注文を確認しています。お客さんの対応もテキパキ。こなれてます。日本語を話しているのは私たちぐらい。
オーストラリアと同じ風景
どこかで見たシーンだなあ。そうだ、オーストラリア。30年ぐらい前、シドニーに住んでいました。オーストラリアの文化、気質は私が育った北海道と似て、とても好きな国です。フレンチポテトから始まってビール、ワイン、シーフード、ミート、オーストラリアの食べ物はすべてがおいしい。なりよりもリラックスできます。久しぶりに同じ空気を味わいました。
コロナ禍が収まり、海外からスキーやスノーボードなどを楽しむ観光客が北海道富良野市に戻っていました。一年前は日本人ばかりでしたが、今年は全く違う風景をあちこちで見かけます。スキー場もホテルも外国人が半分ぐらいを占める印象です。露天風呂に入れば、日本人は少数派。銀行ATMでも外国人が並んでいます。宿泊したホテルに近いコンビニには、オーストラリアが誇る「TimTam」がありました。「ヌテラ」と並ぶオーストラリアを代表?するチョコレートで、スイーツは舌が溶けるほど甘くなければいけないモノと教えてもらいました。アルコールの棚は驚きますよ。これだけの酒類を揃えているコンビニはそうないんじゃないですか?
へそ歓楽街には昭和の香り
といっても、富良野市の「へそ歓楽街」に行けば昭和の空気を思い切り吸えます。炉端やおでん屋さん。お店そのものが良い味した居酒屋さんが並びます。さきほどの洋食レストランと違い、お客さんは地元の人か観光客でも日本人。おでん屋さんに入りましたが、薄口の出汁におでんの具がほどよく滲み、いくらでも食べられそう。「今日は良いじゃがいもがなかったから、北海道なのに無いのよ」とおかみさんはお店としての気構えをきっちりと見せてくれます。
フラノマルシェなど他の地域が真似たモデルも
富良野はニセコと並ぶ世界で知られている街です。色鮮やかな農作風景が人気の美瑛にも近く、コロナ禍前は海外観光客が多く訪れていました。街づくりの成功事例もあります。富良野市内にある商業施設「フラノマルシェ」は地元の農産物などを中心に品揃え、陳列方法、イベント展開などで大成功。全国に増殖する「道の駅」のモデルとなりました。2010年4月の開業した直後に訪れましたが、市民、観光客のみならず全国から視察に訪れる人も加わり、週末は人で溢れていました。
街づくりの基本は「北の国から」なのでしょうか。富良野でスキーといえば、プリンスホテルを思い浮かべるぐらいでしたが、富良野に住む倉本聡さんが描いた「北の国から」のドラマの舞台となり、街を回るとあちこちで「北の国から」を見かけます。それから10年余り過ぎた今も余韻をみかけます。交通指示板にも「富良野演劇工場」、ラーメン店「北の国から・吾郎のラーメン」、ホテル内にも倉本聡さんやドラマ、演劇を紹介するコーナーがあります。
昭和の香り、平成の街づくり、そしてコロナ禍後の令和。富良野市内を歩き回ると、街の変遷を感じます。経済を支えるのは農業と観光業。いずれも「富良野・FURANO」ブランドは日本、世界に広まっており、過疎化に直面する他の地方都市に比べて底力があり、未来を創る力があります。
北の国からも賞味期限では?
ただ、2年連続で訪れた富良野は、そろそろ賞味期限が迫っている印象を受けました。スキー場は外国人、関西からのスキー修学旅行などで賑わっていましたが、土日でも閑散とする時間が目立ちました。フラノマルシェも他の道の駅が真似ているだけあって、差別化する新たな強い個性が見当たりません。「北の国から」のファンではないので、申し訳ないのですが、ネットも含めて至る所で「北の国から」をアピールされても刺さりません。
新たな富良野ブランド創りを
北海道は海外資金の流入を追い風に新たな不動産開発が加速しています。富良野市も例外ではありません。昭和、平成と積み重ねてきた富良野・FURANOブランドを令和でどう磨きをかけるのか。美しい街が壊れる前に・・・