南太平洋8 ブーゲンビル島 言葉は通じなくても、気心が通じ合えば
ブーゲンビル島の生活を続けます。
一本のバーボンを10人で
島の食材は不足しています。夕方が近づくと、みんなで食べ物を寄せ集めてなんとかお腹を満たします。夜になるとお酒でも飲みたいなあと思います。日本人の私だけではありません。夕方にお腹を満たした後、寝るまでの数時間をどう過ごすかを考えます。真っ暗ではありません。テレビスタッフが平和維持軍から電源を調達してビデオの編集などを作業しますから、周囲に明るさが戻っています。私はノートパソコンで記事を書いて東京本社へ配信する仕事が最優先であります。ところが残念ながら通信状況が良くないので、ホント残念ながら原稿を送れない時間帯があります。ポカッと空いた時間帯をどうするのか。国によって編集締め切り時間が違うのでバタバタする時間帯が違うのですが、現地から原稿を送信できなければ、それこそ手も足も出ません。それはどこの国の記者も同じです。「みんなでお酒を飲もうかあ〜」という空気が広がります。
パプア・ニューギニアは当時、外国人によるアルコールの持ち込み規制が厳しく、確か1リットルのウイスキーが上限でした。平和維持軍から食料とテントなどを自前で用意して来い、と言われたブーゲンビル島です。パプア・ニューギニアに入国する際、自分で持ち込める荷物の量を念頭にパソコン、カメラ、食料などを持ち込んでいます。私はといえば、「アルコールがそばにないと寂しいなあ」との思いを消せませんでした。学生時代から飲み続けているバーボンを免税店で見たら、買わざるをえません。
夕食後、廃屋で寝泊りしているジャーナリストたちが集まり、なんか飲もうかとなりました。いつもは知らないふりはしていますが、お互い原稿を書いているのか、ビデオ編集しているのかを見ていますから、今晩は暇だなぐらいは察しがつきます。オーストラリア、日本、ニューカレドニア、パプア・ニューギニア、米国などいろんな国から訪れています。連日、取材も一緒、食料集めも一緒と同じような行動パターンを共にしていますから、だいぶ息は合っています。いわゆる気心が通じる仲です。メディア同士の競合もほとんどありませんから、妙な隠し事はしませんし。
ところが飲もうと思ったら、手持ちはバーボンウイスキーが一本だけ。そうです、私が免税店で買った一本だけです。他のみんなはやはり持ち込む荷物の量を考慮してアルコールを購入していませんでした。代わりにコーヒーや紅茶などインスタントのかさばらない飲料を持っています。最初は粉末コーヒーに沸騰したお湯を入れて話していましたが、周囲が暗くなり時間も経過すると、アルコールが恋しくなります。