南太平洋8 ブーゲンビル島 言葉は通じなくても、気心が通じ合えば 

 「バーボン一本しかないから、1人わずかの量しかないけれど飲みますか?」と提案したら、みんな、OKの声。人数は10人程度です。バーボンウイスキーのオーナーである私からそれぞれのカップやグラスにちょっとずつ注いで歩きます。集まった場所は寝泊りしている廃屋の目の前にある大きな樹木の下。一応、マラリアを媒介する蚊を注意して蚊取り線香を焚きます。集まったみんなの言語はバラバラ。日本語、英語、パプア・ニューギニアの現地英語、フランス語などで話すのですが、気心が通じているせいかどんな話題でもそれなりに理解し合うことができます。米国から視察に来ていた国連職員が平和維持軍が設定したテントで休んでいたので、ちょっと離れている場所だけど呼んで今回の国連抜きのPKO(平和維持活動)について意見を聞こうなんて感じで話題が広がっていきます。飲んでいるウイスキーはわずかですが、気分はとてもほろ酔いになります。不思議です。ボトルに残る最後の数ミリリットルを誰に注ぐかでも議論になります。

仲良しになったパプア・ニューギニアの記者たち

 みんなでフムフムと首を振りながら議論を交わしたりした中で、パプア・ニューギニアやニューカレドニアなど普段はあまり馴染みのないメディア事情なども聞きます。パプア・ニューギニアの記者らは政府の目が厳しいためか、なかなか本音を明かしてくれません。ブーゲンビル島の独立運動の記事をどこまで深く書けるかと微妙なニュアンスを話します。むしろ海外のジャーナリストがどう書くのかに興味がありました。記者の話し方それ自体がその国のメディア事情を明らかにしてくれます。おもしろいですね。

ブーゲンビル島の子供ら

タヒチ島でもそうでしたが、フランス領であるニューカレドニアでも独立運動が継続しています。同国から来ているジャーナリスト男女2人はフランス政府の施策を意識した公式的な報道の苦労を話した後、フランス系でありながらも独立したい現地の空気を支持しており、今回のパプア・ニューギニアでのPKOは将来の参考になると説明してくれました。現地の空気を知るために現地メディアを取材することはよくあります。彼らは状況を簡潔にわかりやすく説明するプロですから理解しやすいのは取材する方にとってもありがたいのですが、わかったつもりになってしまい、現地取材が疎かになる時があります。とりわけ南太平洋の島国は政治、経済とも日本から注目を浴びていませんから、十分に注意しているつもりですがそれなりの説明で知ったつもりになってしまいます。バーボンウイスキーの手助けがあるとはいえ、わずかですが気を許しあえる仲間意識が生まれ、日本、オーストラリアなども含めて各国のメディアで働く人間の胸の内を聞けたのはとても貴重でしたし、今も忘れられない楽しい思い出でした。

しかし、気を許しすぎて失敗もします。ニューカレドニアの記者の女性から「あなた、フランス語の歌を何か知っている?」と聞かれたのです。大学時代はフランス語を真面目に勉強していましたから、思わず「ウイ」。じゃ歌ってというので、当時流行していたフランスの歌「レディ・マーマレード」(歌名は後で知りました)」の最大のサビである「Voulez-vous coucher avec moi ce soir」と調子に乗って歌ったら、男のジャーナリストは笑ってくれましたが、女性は下を見てゲンナリしてしまいました。世界的に流行した歌なので大丈夫かと思ったのですが、見事に外しました。余談ですが、先日通っているジムでBGMとして「レディ・マーマレード」が流れ、健康的な空間との違和感に笑ってしまいましたが。

ブカ島は賑やかな街

トラックに乗せてもらって島内を回る

休み時間に買い物をするパプア・ニューギニア軍の兵士たち(注 右下の年月日はカメラの入力ミス、誤りです)

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