熱帯樹林のなかにボーイング

南太平洋 4 ナウル 鶏糞で購入したボーイングが熱帯樹林に

 食生活もなかなか迫力がありました。南太平洋の人はタロイモを食べるので男女ともでかい体型の人が多いのです。ナウルの人はレストランで必ず頼むのがコカコーラ。しかも1リットル瓶です。

 私が学生の頃はよく見かけていましたが、最近は日本で売っている風景は見ないですよね。ナウルのレストランで食事をするテーブルを見ると、魚、肉などを食べながら、一人一本の1リットル瓶のコカコーラが煙突のように立ち並びます。なかなかの壮観なシーンです。ナウルでは今でも肥満が多いと問題になっているそうです。

 日頃あまり働かず運動もさほどしないにもかかわらず1リットルのコカコーラを飲み続けたら、さすがに体型はでかくなります。私はタヒチ編でも書きましたが、現地の食べ物に飽きると南の島には必ずある中国料理店を探し出して食事したものです。

 ちなみに南の島だからビーチでサーフィンや水泳などで運動するだろうと思う方がいます。しかし、ビーチで泳いだりスポーツするのは欧米や日本などの観光客です。南の島の人は朝、ビーチに行って排斥物を流してスッキリするぐらいです。

 ついでに付け加えると、タヒチなどのビーチにある別荘風のレストハウスは新婚旅行などで人気があります。そのトイレは海に流す仕組みのはずです。そのトイレの穴を覗くと極彩色の熱帯魚が餌がいつ落ちてくるのかを待っています。海にはちゃんと資源循環のシステムが生きています。

 「ナウルがリン鉱石にあぐらをかいている国」と批判しているように見えるかもしれません。それは誤解です。国際会議場の食堂でランチした時は、「私は日本のアサヒビールのスーパードライしか飲まない」とうそぶくナウル政府の高官がいましたが、あくまでも少数派です。多くの国民は「このままでは自分たちの未来は見えない」と心配していました。

 リン鉱石が遠からず枯渇するのはみんなわかっていましたし、かといって代わりの産業があるわけではありません。鉱山開発で自然は荒れてしまい、観光産業を興そうとしてもタヒチやフィジーにはかないません。人口が一万人余りと少ないです。小さな島ですから農水産業だけで自給自足ができるかどうかです。ナウルはリン鉱石の枯渇で経済が破綻状態にまで追い込まれましたが、2000年代に入ってリン鉱石の2次採掘に成功して再建に向けて試行錯誤しているようです。

 結局は海外の援助が必要になります。ナウル政府は外交政策として台湾を国交樹立していました。その後、中国の経済援助に引っ張られ台湾と断交。そして中国の外交政策に反発して再び台湾と寄りを戻しています。このように経済援助で揺れ動くナウルは南太平の島嶼国の一例にすぎません。

 フランス領ポリネシアでも同じ風景を見ました。現地の住民に努力しろと言っても、欧米主要国、あるいは中国の経済援助に頼ってしまえば、そこで知った生活レベルを下げるのはとても無理。そこに地球温暖化による海水面の上昇が南太平洋の島嶼国に襲いかかります。海鳥はナウルから飛び立つことができますが、ナウルの国民はたやすく離れることはできません。日本からは地球の赤道上の胡椒の粒にしか見えないナウルは、リン鉱石の粉塵ととも消えてしまうのでしょうか。

 日本のメディアの中には「地下資源に甘えて束の間の富を謳歌した国」としてナウルを取り上げる例があります。しかし、そうですか?確かに何万年もかけて築き上げた鶏糞の山は1世紀ほどで自ら産み出した富を消耗してしまう運命です。

 それは地球の資源を無限にあると勘違いして消費している人類の運命を予感させているように見えませんか。ナウルは鏡に映った私たちの今なのです。

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