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ディスコがエヌビディアと輪舞して生成AI半導体をリード 総利益率は70%超

 半導体研磨・切削装置のディスコが驚愕の中間決算を発表しました。過去最高益を計上しても当たり前と思える勢いを見せていましたが、営業利益率は42%を超え、売上高総利益率は初めて70%を上回りました。しかも、収益力の源泉は、あのエヌビディア。生成AIの駆動に必要な半導体開発で最先端を走り、マイクロソフトやアップルと並んで世界最大の時価総額を競う企業です。エヌビディアとディスコが生成AIと共にどのような輪舞を演じ続けるのか。ディスコの未来が楽しみです。

中間決算の数字は異様

 ディスコが発表した2025年3月期第2四半期(4〜9月)によると、売上高は前期比41・8%増の1790億4300万円、営業利益は68・7%増の759億5200万円、経常利益は62・2%増の750億5200万円、純利益が63・4%増の534億4300万円。いずれの利益も6割超の増加を達成しています。純利益は半期ベースで過去最高です。

 営業利益率は42・4%。売上高総利益率も70・8%。半期ベースで初めて70%を超えました。経済記者として数多くの決算を見てきましたが、ディスコが中間決算で見せる数字が製造業としてはあまりにも異様に高く、目に馴染みません。短期的な幸運に恵まれたなら驚きませんが、当面は高水準の数字を維持しながら稼ぎ続ける可能性が高いだけに、ちょっと怖さを覚える不思議な気分です。

パートナーはエヌビディア

 なんといっても、あのエヌビディアが開発する半導体を実装するためには、ディスコしか持っていない最先端の切削技術が必須という事実を見逃すわけにはいきません。言い換えれば、製品シェアは事実上100%。一手に握っているのです。ライバルが見当たらないのです。シェア100%って、そうあることではありません。しかも、まだまだ成長する生成AIの半導体です。

 エヌビディアが開発する生成AIを駆動させる最先端半導体メモリーは、データを一時記憶するDRAMを積み重ねた構造で、データの記憶容量や転送速度をより高水準に作動する設計となっています。多層型となるため、半導体素材のウエハーは超がつくほど極薄で、数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のレベルと要求されます。パソコンなどに使われるDRAMのウエハーは数百マイクロメートルですから、桁違いの高精度で繊細な切削技術が求められます。

 ウエハーを高精度で切削できるのがディスコの研削装置(グラインダー)だけです。ライバルの東京精密でも手が出ないと言われており、ディスコがシェアをほぼ独占しているそうです。

「切る、削る、磨く」を極め、世界も

 生成AI向け半導体の需要は増える一方です。日本経済新聞によると、エヌビディアに半導体を供給する韓国SKハイニックスは2028年までの5年間で半導体事業に総額103兆ウォン(約12兆円)を投じる計画で、8割は生成AI向けだそうです。韓国や米国で新工場を建設するそうですから、この分野の研削装置でシェア100%を握るディスコの受注額は増えるのは必至です。ライバルが見当たらないのですから、受注内容もかなり有利になるはずです。

 「切る、削る、磨く」。ディスコの技術を表現する言葉はわずか3つです。広島県呉市で戦前から磨き上げた技術は、他を圧倒する競争力を持ち合わせ、他社が真似できないユニークな経営で日本の製造業の中でもずば抜けた存在になります。英エコノミスト紙は、ディスコの関家一馬社長の経営手腕をエヌビディア創業者のジェンスン・ファン氏と並べて世界的な経営者の1人と高く評価していましたが、偶然にもディスコとエヌビディアの2人の経営者が生成AIを支える半導体を舞台に輪舞を楽しむかのように世界をリードすることになります。

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