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ハイブリッド車は2035年まで?(下)EVの技術革新、充電などインフラ整備は急加速

 ハイブリッド車が電気自動車(EV)に代わって高い人気を集める理由の一つは価格の安さ。その源泉は長年、積み上げてきた自動車産業の技術革新にあります。自動車は3〜5万点の部品で構成されていますが、いずれも品質や耐久性の評価に合格したものを大量生産して供給されます。非常に乱暴な単純計算ですが、部品あたりのコスト100円と見れば、人気の中型SUVと同じ価格水準になります。当然、1円単位の部品もあるわけですから、日本の製造業の凄さに改めて脱帽です。

将来予測はEVの課題が次々と解決

 EVの課題は明確です。航続距離を延ばすバッテリー性能の向上、充電ネットワークの拡大、部品量産化による生産コストのダウン。いずれも解決するには高いハードルが待ち構えていますが、2035年の未来予測を見るとクリアできる可能性があります。韓国の調査会社、SNEリサーチがまとめた調査を元に点検してみました。ちなみにSNEリサーチはEV、再生可能エネルギーなどを中心に市場調査しており、英エコノミスト紙などが調査結果を引用しています。

 まずは現時点の状況から。好調な販売を見せるハイブリッド車(プラグインを含みます)は2023年でシェアは4%程度。日本の感覚からすると思ったよりも低いですが、調査予測の対象は世界市場ですから、こんなもんです。同年のEVは15%程度。逆に日本の感覚ではそんなに高いのかと驚くレベルですが、世界最大の自動車市場である中国ではものすごい勢いでEVが売れていますから、こちらもこんなもんかな。残りは当然、エンジン車が圧倒的にシェアを占めます。

2050年のEVはシェア75%に

 ところが、2050年までの予測を見通すと、風景は激変します。ハイブリッド車は増加し続けますが、2033年ごろにピークを迎えるようです。その時のシェアは20%程度。巷にハイブリッド車がEVを凌ぐといった礼賛が一部広がっていますが、世界販売でみればピークで20%程度。2035年には新車で占めるシェアは下降し始め、2050年は11%程度に。エンジン車はどんどんシェアを下げており、13%程度に。なんとハイブリッド車とエンジン車は同じ比率で並ぶ見通しです。

 エンジン車に代わって圧倒的なシェアを獲得するのはEV。75%程度まで伸びます。2024年現在からみれば25年も先の見通しですが、自動車開発は5〜10年先を見通していますから、出遅れた日本車メーカーはかなり急がなければ世界のEV市場から取り残されてしまうでしょう。裏返せば、ハイブリッド車の開発にエネルギーを注ぐ余裕などもうないのが内情でしょう。今からハイブリッド車開発に注力する欧米メーカーがありますが、5年後はどんな結果となって現れるのか。楽しみです。

 EVが2050年に70%以上のシェアを握る必須条件は、バッテリーなどの技術革新や充電インフラの拡充です。SNEリサーチによると、バッテリー用のリチウムイオン電池の供給量は2025年には2022年の3倍も増え、2035年には5倍に膨らみます。EVの販売増に比例してバッテリー需要も急増する見通しですが、供給量は常に過剰状態。生産量が増え、供給が需要を上回っているなら、価格は低下するのが必然です。EVの価格が割高になる背景にはバッテリーコストの高さが主因です。2035年に向けてバッテリーが割安な水準になるなら、EVの価格は確実に低下します。

充電市場も2030年の10倍に

 技術革新も期待できます。トヨタ自動車や出光興産などは2027年以降に全固体電池の実用化をめざしています。現在のバッテリーに比べ、高温・低温時でも問題なく作動するほか、航続距離も1000キロ程度まで延びることが期待されています。2035年までにバッテリーが抱える高コスト、航続距離の延長が解決すれば、EVの普及は確実にシフトアップします。

 もう一つの課題である充電インフラも2050年に向けてかなり整備される見通しです。SNEリサーチによると、充電関連の市場は2030年には2022年の10倍近く拡大すると予想します。これだけの市場拡大は充電関連の設備コストダウン、スタンド数の増大が進むことを意味しています。

 EVの普及は、地球温暖化対策として規制を強化した各国の政策が引き金でしたが、EVの性能、価格、充電インフラの課題が解決すれば一気に増えます。ハイブリッドの隆盛は2035年までと考えても、良いかもしれません。

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