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ヤマト運輸、大東建託が価格交渉・転嫁の低評価で突出「だろうなあ」の企業名が並ぶ下請けいじめ 

  取引先の中小企業と価格交渉や価格引き上げに後ろ向きな企業を経済産業省の中小企業庁が公表しました。端的な表現でいえば「下請けいじめ」を点数化し、是正に向けた警鐘。最低の評価を得たのはタマホーム、エディオン、一条工務店の3社。公表内容を見ると「だろうなあ」と感じ入る企業名が並びます。価格交渉、価格転嫁ともに低評価を集めた企業をみると、ヤマト運輸が77社、大東建託が52社から「下請けいじめ」の印象を与え、突出していました。今回の調査は消費者が広告などで知る「表の顔」と違う「裏の顔」が浮き彫りになり、とてもおもしろい内容です。 

一条工務店、タマホーム、エディオンは最低評価

 調査は2024年3月の価格交渉促進月間のフォローアップとして30万社にアンケートを配布し、4万6461社が回答しました。「下請けGメン」も約2000社をヒアリングしました。価格交渉や転嫁の状況を10点満点で採点してもらい、その平均値を「7点以上」「7点未満、4点以上」「4点未満、0点以上」「0点未満」の4段階に分けて企業を評価しました。このうち10社以上の中小企業から指摘された290社を公表しました。

 最低評価のタマホーム、エディオン、一条工務店はなかなかです。いずれも価格交渉は「0点未満」、価格転嫁は「4点未満、0点以上」。指摘した企業数はタマホームが13社、エディオンが11社でしたが、一条工務店は26社と倍以上もあります。価格交渉が「0点未満」ですから、3社とも鼻から相手にしていない態度を示したと受け止められたのでしょうが、一条工務店の”硬派”ぶりは抜きん出ています。

 一条工務店はその躍進ぶりが話題になっていました。ホームページで「最近年間で最も売れている注文住宅会社」など3項目で2019年からギネス世界記録を4年連続して認定されたと誇示するほど。それほど他社との価格競争力は知られていました。成長する収益を稼ぎ出すためには取引先、下請けに厳しく対応するしかないのでしょうか。タマホームもエディオンも広告などで「割安」を前面に出しています。「儲かる」「安い」は下請けの犠牲がなければ達成できないのが現実なら、悲しいものです。

ヤマダ電機、コメリなど18社も低評価

 「0点未満」ではありませんが、価格交渉と価格転嫁で「4点未満、0点以上」とそろった企業は18社。一条工務店などに比べまだマシかもしれませんが、誠に格好悪い。企業リストにはヤマダ電機、コメリ、パナソニックホームズ、セイコーエプソン、三井ホーム、西濃運輸、UDトラックス、モルテンなど有名な企業が名を連ねています。モルテンは五輪や世界選手権などで使われるバレーボールで世界トップの会社で、日本国内では65%のシェアを握っています。店頭の価格を支配するモルテンでさえ、世界トップの座を守るためには下請け企業に強烈なスパイクを放つ必要があるのでしょう。

 中小企業庁が公表した290社の大半は、「下請けいじめ」と指摘する中小企業数が10〜20社程度ですが、突出していたのがヤマト運輸の77社と大東建託の52社、そして西濃運輸が27社。ヤマトや西濃は宅配便サービスなどで関係する取引先が多いこともあるのでしょうが、人材確保に苦労して人件費が増加しているうえ、燃料費も高騰している運輸業界だけに、多くの経費項目にわたってコストカットに走っている現状が浮き彫りになります。

大東建託は典型例

 大東建託も「だろうなあ」の典型例です。土地を借り入れ、アパートなどを建設するビジネスモデルで急成長してきました。用地の物色、地主との交渉、賃貸物件の開発などで発揮する営業担当者の凄腕ぶりはよく耳にしました。もうだいぶ昔ですが、株式上場に向けて準備している時、取材に行こうとしたら上場を仕切る幹事証券会社から「ウチの儲け口を紹介するわけにはいかない」と笑いながら、阻止された経験がありました。その後は、期待通りに急成長しましたが、賃貸物件のオーナーと契約を巡る争いが多発し、事業モデルそのものが疑問視されたことがあります。そんな過去を知るだけに、52社が「下請けいじめ」と名を挙げたのは納得します。

 中小企業庁は企業名を公表したことについて、価格に関する交渉の改善に繋げてほしいと説明しています。実際、1年前に公表した企業リストと比べると、低評価の企業が是正されている事例もあります。この数年、円安によって燃料など輸入に頼る原材料は高騰しているほか、人件費も上昇しています。公表リストに掲載された企業の多くは、高収益で知られる優良企業です。自社の決算内容の見映えを守るため、経済合理性に反して強引に取引先の下請けから1円でも多く利益を捻り出したい思いもわからないでもないですが、法律を持ち出すまでもなく決して許されることではありません。

あの高収益のキーエンスも低評価

 意外だったのは、キーエンス。下請け14社から価格交渉で「7点未満、4点以上」、価格転嫁で「4点以下、0点以上」の評価を集めていました。同社の営業スタッフは猛烈な働きぶりで知られており、年収も軽く1000万円を超える高収入で注目を浴びています。納入先のニーズに合った製品を開発し、販売するため、非常に高い利益率を維持する企業として高い評価を集めています。あれだけの営業力があり、製品もカスタムメイドなので下請けからの価格引き上げを認める余力があるのかと考えていましたが、素人の甘い考えでした。ビジネスの世界は厳しい。でも、この手法がいつまで続けられるのでしょうか。

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