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ホンダの次は鴻海?「日産社長になるはずだった鴻海・関」の影に怯える日産

 日産自動車がホンダとの経営統合協議を白紙に戻しました。対等を前提に持ち株会社の設立を協議していましたが、リストラなど経営改善が進まない日産に呆れたホンダから一転して子会社化を突きつけられ、ちゃぶ台返ししてしまいました。創業90周年を超える日産にとってホンダは戦後生まれの格下。誇りが傷ついたのでしょうが、家財が破産寸前の現実を直視しない放蕩息子にしかみえません。内田誠社長は経営者として不適格と自ら烙印を押したようなものです。

内田社長は不適格の烙印

 さて日産はどうなるのでしょうか。早くも台湾の鴻海精密工業がホンダに代わって日産を飲み込むのではないかとの憶測が駆け巡っています。ホンダとの経営統合が浮上した頃から鴻海の名前は飛び交っていましたから、手を挙げる可能性は十分あります。日本の基幹産業である自動車メーカーを台湾企業に買収されることに対し「経済安全保障上いかがなものか」と反発する声は出るでしょう。

 ただ、瀬戸際に追い込まれた現実を直視できない日産を再建するには、かなりの大手術が必要です。私見としては日立製作所が「白馬の騎士」として現れ、半導体のラピダス方式で日産を再建するのがベストと考えていますが、経産省がそこまで腹を括ることができるかどうか。興味のある方は、下記の原稿をお読みください。

日立が日産を救済する日 復活の成功体験を注入し、半導体のラピダス方式で再建 https://from-to-zero.com/zero-management/hitatihelpsnissan/

 もっとも、日産の再建だけを考えたら、鴻海による買収は悪い話ではありません。再建が成功する確率は十分に高いとみます。なにしろ、鴻海には関潤氏がいます。関氏は2023年2月から電気自動車(EV)事業の最高戦略責任者(CSO)を務めていますが、本来は日産社長となっても不思議ではない人物。ご本人も、自分が座る椅子は鴻海ではなく日産本社にあると考えているかもしれません。

日産再建の確率は高いかも

 2019年10月、日産の経営が大混乱するなか、社長人事が発表されました。社長は内田誠専務が昇格。加えてアシュワニ・グプタCOO、関潤・副COOの2人が脇を固め、3人によるトロイカ体制で新たな日産に向けてスタートを切りました。当時はカリスマ経営者として実権を握っていたカルロス・ゴーン氏が金融取引法違反などで逮捕され、ゴーン氏の追放劇の後に就任した西川廣人社長は1年足らずで不正報酬をめぐる責任をとって辞任。経営陣に対する信頼は崩壊寸前に。

 トロイカ体制は信頼回復の第一歩となるはずでした。しかし、日産社内からは真逆の情報が伝わってきます。「関さんは自分が社長になると確信していた。それが内田さんが社長に。関さんはこのままでは残らない」。新体制が発足したばかりでしたが、新たな混乱が待ち構えていると解説するのです。

 確かに関氏は社長に相応しい経歴を積んでいます。生産部門が長く工場業務に精通しているうえ、北米や中国など日産の収益の大半を稼ぎだす海外子会社で要職を歴任。ルノーなど世界の提携企業との調整役も経験しています。どうみても内田社長よりも自動車産業の隅々まで熟知し、人脈も広い。混乱が続く日産をまとめる手腕は自負する通りだったのでしょう。

関氏は日本電産の社長を経てフォックスコンのEVを指揮

 社内の情報は正解でした。なんと関氏はわずか1ヶ月足らずで辞任。転職先は意外にも日本電産(現ニデック)。創業者の永守重信会長が「私は君が社長になると思っていた。社長にしてやるから、うちにこい」と口説いたそうです。2020年には日本電産へ移り、永守会長の口説き文句通りに2021年6月にはCEOに就任。

 ところが、創業者が箸の上げ下ろしまで決める日本電産です。わずか10ヵ月後の2022年4月に業績や株価を期待通りのスピードで上げていないとして社長兼COOに降格。5ヶ月後の9月には退任します。

 日産時代の経営手腕に対する評価は海外に伝わっていました。2023年2月、鴻海精密工業を軸とした企業グループのフォックスコンにスカウトされ、EV事業の最高戦略責任者に就任しました。アップルのiPhoneなど電子機器の受託生産で世界企業へ成長しましたが、最近はEVにも進出しています。

 2023年10月に開催した東京の自動車ショーで展示車を見ましたが、まだ初期モデル。BYDなど中国のEVに太刀打ちできるレベルではありませんでした。EVへ本格的に進出するなら、関氏の経営手腕が喉から手ができるほど欲しかったのがわかります。シャープを買収した鴻海です。日産買収に躊躇するわけがありません。

 関氏が紆余曲折を経験しながら、日産の社長に就任する。そのまま映画やテレビになるドラマを現実の世界で見てみたい気がします。内田社長ら経営幹部は鴻海を恐れ、怯えているかもしれませんが、日産社内には期待している人はいるかもしれません。こんな日本企業の再建劇があっても良いじゃないですか。

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