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トランプ黄金株、やっぱり日鉄が提案 日米政府を後ろ盾に中国勢と闘う鉄人

 やっぱり、推察した通りでした。USスチールの黄金株は日本製鉄が水面下でトランプ米大統領に提案していました。

 日鉄の橋本英二会長兼CEO(最高経営責任者)は6月19日の記者会見で日鉄が米政府の意向を受けてUSスチールの黄金株を自ら提案したことを明らかにしました。6月16日に

日鉄・USスチール 黄金株はトランプの面目を保つだけ 真の黄金は日鉄に」

を掲載して、記事中で「日鉄から提案した」と推察しましたが、当たりでした。過去の日鉄が垣間見せた発想、百戦錬磨の交渉力を考えれば、間違いないと考えたのです。

日鉄は米産業政策の限界を見抜く

 橋本会長はUSスチールの完全子会社化を巡るトランプ政権との交渉を通じて産業政策の限界を見抜いたようです。「再び偉大な米国の復権」を掲げて大統領選に勝利したものの、公約の一つである製造業復活を果たす施策がトランプ関税という愚策しか編み出せない惨状を見極め、攻めに転じたのです。

 橋本会長は「米国が対中国で一番負けているのは製造業だ。関税だけでは製造業は復活できない。米国の鉄鋼業を再生させるために、日本の製造業、日鉄の力を活用するのがUSスチールの再生につながる」「米国は基礎的な技術力と製造力を必要としている。世界で、素材から製品まで製造業を持っているのが日本。日米の製造業の連携は、日本が志向していくべきものの一つだ」と言い切ります。

 日鉄の野望も隠そうとしません。「(日鉄は)45年前は世界一の鉄鋼メーカーだったが、順位を下げてきた。もう一度、世界一に復権するという展望を持つことで、従業員も頑張れる。日本製鉄の利益だけを考えるのではなく、日本の製造業の発展の一つの形になり得るという大義名分がある」と自信満々。

 だからこそ、米政府に黄金株を与える異例の買収についても「経営の自由度と採算性は確保されている」「(日鉄が)やりたいことを阻害されることはない」と明言できます。 

 日鉄は2028年までにUSスチールに約110億ドルを投じ、老朽設備の更新や、製鉄所を新設します。日鉄の森高弘副会長がUSスチール会長を兼任し、日本から40人弱の社員を派遣するそうです。米国の鋼材需要は日本の約2倍もありますが、その視野の先は世界市場の6割を握る中国の鉄鋼メーカーとの闘いが待ち構えています。

黄金株は日米政府の支援の象徴に

 米政府はUSスチールの重要事項に拒否権を持つ黄金株1株を保有し、国家安全保障の観点から日鉄を支えます。もちろん、トランプ大統領に直談判した石破首相ら日本政府も後ろ盾として控えています。

 日鉄・USスチールがめざすのは、脱炭素社会に向けてカーボンニュートラルを実現しながら、中国勢がまだ開発できない最先端の電磁鋼板を武器に世界市場を再び制覇することです。

 さあ、日本の鉄人が米国の新たな友人と共に飛翔します。2025年に誕生した鉄人、がんばれ!!!

注;橋本会長の「 」内のコメントは読売新聞の6月20日付記事から引用しました。

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