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米国のセブンイレブンはガラガラ、井阪社長にコンビニ再建は見えているのか

 米国の大都市を歩いていると、セブンイレブンがあちこちにあります。久しぶりに訪れたニューヨークでも「7」の看板を見かけました。北米でコンビニチェーンを経営するカナダの会社がセブン&アイ・ホールディングスに買収提案した直後だったこともあって、米国のセブンイレブンはどのくらい魅力があるのかニューヨークで何店か覗いてみました。

米国のセブンイレブン「人影がない」

 「あれ、人影がない、ガラガラ」。お昼時でしたが、お客さんが居ません。店内の品物はキレイに陳列されているものの、逆に売れている空気がありません。たまたまお客がいない時間帯だったのかもしれません。訪れた店舗の立地は、マンハッタンの人気スポット「タイムズスクエア」や観光施設に近く、人手は多く決して悪い場所ではありません。隣接するスターバックスは混んでていますし、韓国や日本の料理を手軽に弁当詰めして販売している小さな店舗は客の列が切れません。

 ニューヨークの物価は日本に比べて高いので、簡単な比較はできませんが、米国セブンイレブンの販売価格は高いのでしょうか。ただ、街角に必ずといって良いほどある中央アジア風チキン弁当やホットドックの屋台は安いからといって客が並ぶことはありません。10ドルちょっとでお腹いっぱいになり、コストパフォーマンスは最高ですが、うまいと評判の良い屋台は30分待ちの人の列。でも、客が寄り付かない屋台は全く人気無し。

 ファストフードチェーン店の雰囲気を知りたいと考え、「タコベル」に入ってました。15ドルぐらいでタコスや飲み物がセットのランチが食べられます。次々と客が集まり、途絶えません。店内はとてもきれい。あまりの汚さに店内に入るなり、出た有名チェーン店もありましたが、入店したタコベルは清潔で、スタッフが一生懸命に神経を使っていました。客の中には飲み放題のソフトドリンクが目当てなのか、水筒を持っている客がおり、食事を終えた後に水筒いっぱいにドリンクを詰めて出ていきます。どう見ても15ドルの元手は取っています。客のニーズ、使い勝手にピタリとあっている印象を受けました。

価格に関係なく、混んでいる店は混んでいる

 富裕層を相手に大人気の食品スーパー「ホールフーズ」にも入ってみました。もう混んでいる、混んでいる。「価格なんて気にしない」って感じで品物を買っていきます。日本の「デコポン」が「DECOPON」の名前で並んでおり、価格は5ドル。日本円で600〜700円。日本で1個400〜500円だそうですから、そんな割高ではない。品揃えは豊富で、生鮮品や惣菜も多く、選ぶのが楽しくなります。

 閑散?だった米国のセブンイレブンは、自分の客が誰か見失っているのでしょうか。帰国して間もなくセブン&アイの中間決算がありました。米国のセブンイレブンで感じた素朴な疑問を数字で説明してくれました。納得です。

 決算内容は日本も米国もがっかり。日本国内のコンビニは売上高も営業利益も減少。既存店の売り上げ、利益がともに前年同期を下回っており、地盤が沈下している証拠です。海外も目を覆うばかり。コンビニエンスストア事業の営業収益は14・5%増の4兆6125億100百万円と伸びていますが、営業利益は35・0%減の733億2500万円。店を訪れる客足客数が下回っており、米国も既存店売り上げ、利益は減少しています。

井阪社長は日米セブンの処方箋は見えているのか

 井阪隆一社長は決算の記者会見で日米のコンビニ事業について「何をいっても業績が悪い。顧客に応えられていない。株主への期待にも応えられていない。『変化対応業』として流通業があるが、対応力が弱まっている。反応を早くしていかなくてはならない」と危機感をあらわにしています。

 記者から「北米コンビニが弱い。競合他社に負けていて結果が伴っていないのでは」と問われ、「ものすごい変化が起きている。顧客の意識の変化に対応した所が伸びていて、そこに執着して変化できるかだ。事業会社のトップとも意識を共有してやっていきたい」と答えています。

 セブン&アイは買収提案の今後も念頭にグループ企業の再編を実行して企業価値を高めるとしています。井阪社長は「コンビニ事業に集中することを明確にする」と説明しています。

 米国で感じたのは、コンビニエンスストアという業態が次々と誕生する新たなサービス業に埋没していることです。「欲しい商品を欲しい時に手軽な価格で購入できる」といった従来のコンビニの強みが客が求めているニーズと乖離し始めている印象を受けました。日本や米国のセブンイレブンを見る限り、経営環境の変化に呆然としている様子です。

 井阪社長にコンビニ事業を立て直す処方箋はあるのでしょうか。日米で進行するインフレに慌てて価格や商品戦略に手を加えても、目先の対応にとどまるだけ。コンビニを他のサービスを上回る業態に進化させる経営改革を期待したい。

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