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世界のSUV人気が、EV普及の大きな壁に 自動車各社の開発力がカギに

 新車販売で高い人気を集めているSUVの魅力は使い勝手の良さにあります。悪路にも強い4輪駆動(4WD)方式を採用し、車体は頑丈で後部の荷台が広いのでゴルフ、スキー、スノーボードなどを積み込み、家族や友人らと気軽にどこにでもドライブへ出掛けられます。ところが、これから拡大する電気自動車(EV)市場にとって、SUVの魅力がEV普及の大きな壁になるのではないか。そんな予感してきました。

SUVは新車の3割超

 SUVは「Sport Utility Vehicle」の頭文字から由来しており、その名の通りいろいろな目的に合わせて使いこなせます。多人数が乗れますし、 荷台が広くて使いやすいので、ゴルフバッグ、スノーボードやスケボー、野球道具などのスポーツ用品はもちろん、キャンプに必要なテントや器具も全然余裕で搭載できます。私はスキーやシーカヤックを車のルーフに載せ、山や海のアウトドアライフを楽しんでいます。

 SUVの人気ぶりはすごいですよ。日本の国内市場でみると、新車販売の3割を超えています。1980年代まではセダンタイプの乗用車が市場の主役でしたが、1990年代からSUVの人気は着実に伸びており、ミニバンタイプと並ぶ勢いです。ミニバンも家族や友人ら多人数が乗車でき、いろんな荷物を搭載できるので、コンセプトはSUVとほぼ同じ。こう考えれば、SUVの新車需要は日本国内だけでも6割以上を占めています。

SUV大好きの米国では平均2トン超にも

 米国での人気はもっと凄い。もともと大型車が大好きな国民ですから、SUVの潜在需要は十分にありました。1980年代から売れ筋は大型乗用車からミニバン、ジープタイプ、荷台を備えた小型トラックに移っていきます。英エコノミスト紙のデータによると、米国の新車の重量は平均2トンを超えています。欧州が1・5トン、日本が1・1トンですから、大型車人気が半端ないレベルであることがわかります。しかも、2023年は2・2トンを超える車が新車販売の3割を超えました。5年前が22%ですから、その急増ぶりには驚かされます。

 ヒットするSUVを開発できるか。欧米、日本など世界の新車市場で成功できるかのカギです。自動車メーカーが投入する直近の新車をみれば納得するはずです。エンジン車の市場でこれだけの存在感を示すのですから、EVで主流を占める日も近いはずです。

 好例がEV市場をリードする米テスラが投入した「モデルY」。単一車種として世界で最も販売されましたが、ボディタイプはSUVです。そのテスラを追い上げる中国のBYDも当初セダンで販売台数を増やしましたが、高級感を漂わせたSUVタイプを拡充する計画です。価格が高いので収益力アップに直結しますが、エンジン車のSUVに比べればまだ小ぶりで物足りない。それはEVの制約があるからです・

重量増はEVの開発、価格に負担

 EV市場にブレーキがかかっている理由と同じです。バッテリーの航続距離、充電設備、高価格などを理由に販売が立ち往生し、代わりに燃料補給や航続距離で優れたハイブリッド車が世界で大人気です。ただ、EVが直面する多くの課題は技術進歩やインフラ整備でクリアする日は遠くありません。

 EVを購入したいと考える潜在需要はしっかり存在しています。日本自動車工業会の2023年の調査を見ても、ハイブリッド車を購入する比率が最も高いものの、EVを購入したいと答える比率は着実に上昇しています。懸念材料として「車両価格」「航続距離」「充電時間」の3点が指摘されていますが、バッテリーや駆動系の進化は加速しており、充電インフラが整えばハイブリッド車からEVへ移る客層は増え続けます。

 ハイブリッド車の人気ぶりからEVの先行きを否定的に捉える向きもありますが、それは移行期の一時的な現象です。むしろ心配なのはSUV人気が市場浮揚の重しになることです。SUVはボディが大きく、駆動系、バッテリーもセダンよりも大型になります。元々、EVはバッテリーを搭載することもあってエンジン車に比べて重量増となってしまうのですが、エンジン車の事例と思い浮かべればわかるようにSUVタイプのEVはかなりの重量になるはずです。

自動車各社の実力が試される

 SUVの魅力である多人数の乗員、結構な搭載荷物、長距離を前提にしたドライブなどを想定すれば、EVもかなりヘビーなSUVになってしまうでしょう。割高なEVがさらに高価格になってしまう。この悪循環がEV市場の重しになるのは間違いありません。

 EV市場はエンジン車で確立したSUV人気を支えに拡大できるか。それともSUVが足かせになってしまうのか。自動車メーカーがどのようなモデル開発、価格設定するのか楽しみです。

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