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ダイハツを伝えないトヨタイムズ 企業発のメディアの限界を伝える

 トヨタイムズ。トヨタ自動車が制作する企業発のメディアサイトです。2019年、テレビや新聞などマスメディアが伝えるニュースや解説などの視点に疑問を覚えた豊田章男社長(現会長)が始めました。テレビのCMなどで豊田会長、佐藤恒治社長がトヨタの車づくりなど目の前の課題をいかに克服するかについて熱く語る姿を見たことがあると思います。

豊田会長肝入りのオウンドメディア

 いわゆるオウンドメディアと呼ばれる形態で、多くの企業が手掛けていますが、トヨタイムズはマスメディアへの対抗軸を意識しているだけに、制作に投じる資金と陣容が半端じゃありません。テレビのキー局の人気アナウンサーが相次いで退社してトヨタイムズで活躍している事実だけでも、その力の入れ方が理解できるはずです。記事も経営戦略から社内各部署の現場ルポ、トヨタが応援するスポーツなど幅広く、企業のホームページの枠を軽く超えています。

 そのトヨタイムズがダイハツ工業の安全に関する不正試験に伴う企業危機をどう伝えているのかを見てみました。2023年12月22日午後1時現在では、フロントページには「ダイハツ」の文字は見当たりません。最新の記事を集めた「新着」のトップは「真っ白な世界でも『足の位置が見える』全盲の柔道家がたどり着いた境地」(12月20日)。そのほか「デジタルと匠の技」「フォークボールを調べると、クルマの燃費がよくなるってどうい・・・」「元気と勇気が絶対王者を追い詰める!伝統のトヨタ社内駅伝に新・・・」などが過去記事として並びます。

トップページにダイハツは見当たらず

 「最近のトヨタ」をみてみます。トップは自動車工業会会長人事です。5年間務めた豊田章男会長は2024年1月にいすゞ自動車の片山正則会長へバトンタッチする内容です。最初のページに掲載される記事7本のうち5本の記事の写真に豊田章男会長が写り、あと1本に佐藤社長が掲載されています。豊田会長の写真のうち1本は岸田首相、あと1本には十倉経団連会長と並んでいます。企業メディアですから、PR色が濃くなるのは仕方がありませんが、トヨタの2トップがほぼ占有する記事が「最近のトヨタ」と言われるとちょっと首を傾げてしまいます。

 12月20日に発表したダイハツの全車種販売停止、そして翌日の全工場で生産停止に関する記事はどこにも見かけません。新聞やテレビいずれもがトップニュースとして伝えている重要な事件です。自動車産業の信頼を根底から覆したうえ、軽自動車シェアの33%を握るトップメーカーが販売と生産を停止するニュースは日本国内の雇用、消費に大きな影響を与えます。

 しかも、ダイハツはトヨタの完全子会社です。20日の記者会見ではダイハツの社長らと並んでトヨタ副社長も出席しトヨタ向けの供給増がダイハツの開発などの現場に負担になっていたことが認識できず「反省している」と話しています。トヨタによるグループ企業に対する企業統治、内部統制に不備があったことを認めているわけです。当然、トヨタ車を購入する消費者の視線はダイハツと並んでトヨタ本体に対しても厳しくなります。

ダイハツの事件は雇用、消費に影響大

 日野自動車、ダイハツと続く新車開発を巡る不正は、トヨタグループにとって深刻な打撃となって経営の根幹を問いかける事件です。トヨタは今回のダイハツの販売停止などの措置についてトヨタの業績への影響は軽微だと説明しているようですが、なぜ軽微なのか理解できません。目先の決算数字については軽微でも、トヨタの企業統治に対する信頼は明らかに揺らいでいます。

 言わずもがなですが、トヨタは日本最大の企業集団であり、近い将来豊田章男会長は、経団連会長に就任する可能性もあります。自他ともに認める日本経済のリーダーです。

トヨタタイムズが伝える価値がない?

 トヨタイムズこそ率先してトヨタの考え、今後の対応を説明する役割を担っています。ダイハツは伝えたくない事実なのか、それとも伝える価値がないのか。企業発のオウンドメディアの限界を自ら示しているのは事実です。残念です。

◼️ 写真はトヨタイムズから引用しました。

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