
読売とフジ 身内に甘い倫理観を浄化できるか マスコミ信頼回復の分岐点
新聞、テレビの信頼を揺るがす不祥事が続きます。フジテレビが中居正広性加害問題で局内の倫理崩壊を曝け出す一方、読売新聞は東京地検の捜査対象者を取り違える誤報で稚拙な取材力を世間に知らしめました。
経営責任を対外に示すも
両社とも不祥事に対する経営責任を明らかにしましたが、いずれも身内に甘い処分に映る中途半端な内容。批判の声は止まりません。ただでさえマスゴミと揶揄されている新聞、テレビ。自ら浄化する姿勢を示さなければ、マスコミの信頼回復はとても覚束ない。
読売新聞は8月27日付朝刊1面で東京地検の捜査対象者を取り違える誤報を巡る人事処分を発表しました。前木理一郎専務取締役編集担当と滝鼻太郎執行役員編集局長は役員報酬・給与の2か月30%を返上。小林篤子社会部長は更迭。当日の編集責任者の編集局デスクをけん責、社会部のデスク、司法記者クラブキャップ、担当記者は出勤停止7日。
誤報の原因は、取材担当記者の思い込み。その後の取材でもキャップやデスクは事実確認を指示せず、他の記者から誤報の可能性を指摘されながらも掲載に踏み切りました。読売は過去の誤報を教訓に念入りに正誤を問う取材手順を決めていますが、守られていませんでした。
仲間内で守り合う
長年、新聞記者してきた身から見て信じられません。東京地検による衆議院議員の不正を朝刊1面トップで報じる記事であるにもかかわらず、曖昧な事実確認のまま記事化を認めた編集担当役員、編集局長が報酬・給与返上で済むレベルなのか。誤報に軽重があるとは思えませんが、いくらなんでも社会部長の更迭では不十分でしょう。
背景には読売の社内力学があるのでしょうか。山口寿一社長は読売新聞のみならず新聞業界を牛耳った渡辺恒雄氏の秘蔵っ子。後継者を自任しているだけに、社長決済の人事処分に誰も異論は挟めません。滝鼻編集局長は父親が読売新聞社会長などグループの要職を務め、現在もグループ本社相談役、読売巨人軍最高顧問の滝鼻卓雄氏。こちらも編集局長の更迭の可能性はないでしょう。
読売新聞は創業者の正力松太郎氏以来、務台光雄、渡辺恒雄と独裁的な経営が続いています。他の新聞社も似たり寄ったりでとても批判できるとは思えませんが、今でも日本の政治経済に強い影響力を持っているのも事実です。とんでもない誤報となっても、身内の論理で中途半端な、側から見れば甘い処分で収めてしまったら読売のみならず新聞は奢っていると批判され、評価、信頼は低下するばかりです。
40年以上牛耳った日枝氏は何もなし
フジテレビも読売新聞とほぼ経営事情が同じ。社長、会長を歴任した日枝久氏は、取締役相談役に退いた後も人事権を握り、40年以上に亘ってフジを牛耳っていました。中居正広性加害問題も当時の港浩一社長、大田亮専務(問題発覚時は関西テレビ社長)は日枝氏の子飼い。一連の騒動で港フジ社長、大多関テレ社長らは辞任し、経営陣は大きく変わりました。
8月28日には、港氏と大多氏に対し50億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴しました。2023年6月に元タレントの中居正広氏と同社元女性アナウンサーとの間で生じた事案について報告を受けながらも、調査や対策など善管注意義務を怠り、フジに損害を与えたというのが理由です。
フジテレビの親会社、フジ・メディア・ホールディングスが上場しているので、損害賠償請求の提訴は十分に予想されていました。損害は450億円以上ですが、身内に甘いとの批判を意識してか50億円に設定。金額が少ないと批判されるからです。
ところが港、大多両氏らフジ経営陣に大きな影響を保持した肝心の日枝氏は何もなし。経営陣から退いたものの、対外的な処分は無し。フジテレビの倫理崩壊は仲間内の馴れ合いの結果でもあります。その根源の一つは日枝氏を頂点とする派閥が仕切ったことです。にもかかわらず、日枝氏は蚊帳の外なのか。「なぜ」と不思議な思いを持っても、不思議ではありません。
SNSなどネットメディアが主流になっている今です。新聞の販売部数は毎年、地方紙一紙が消える規模で減り続け、テレビの視聴層は若い世代が離れ、広告収入よりも不動産収入で経営を支えているテレビ会社です。経営の存続だけを考えたら、マスコミの信頼回復より身内の論理で固めて互いを守り合った方が賢明と考えるかもしれません。
そうなったら、マスコミの未来は衰退の道を選ぶしかありません。