こいのぼり

佇む日本が世界経済の荒波をどう泳ぐ 喘ぐ欧州と中国 求められる勇気と発想力

 世界経済を襲う嵐を日本はどう泳ぎ抜けるのだろうか。

 米国のFRBはは2022年5月4日、0・5%の利上げを決めました。6月から市場に流通する通貨量を緩和から引き締めに転換します。ここまでは予想されたシナリオです。同日、EUはロシアへの追加制裁案を決め、年内にロシアからの石油輸入を全面的に禁止するほか、最大手のズベルバンクを国際的な資金決済から締め出します。EUはロシア産石油に依存度が高く、主力のドイツは大きく頼っていたロシア産天然ガスも縮小します。欧州経済の先行きが予想以上に大きな影を落としそうです。

 一方、中国はゼロ・コロナ政策を抱えながらも上海や北京など大都市でのコロナ禍の拡大を抑えきれず、工場稼働率や物流に大きな支障が現れて経済成長率の危うさがいっそう鮮明になってきました。

 日本経済はまだ安定していますが、決して楽観できる状況ではありません。欧米で進行するインフレの波は日本にも押し寄せ、ガソリンや食品などを中心に消費者物価の上昇は加速しそうです。値上げの動きはロシアによるウクライナ侵攻が始まる以前の昨年から始まっており、短期的に収束する可能性は低いはずです。

 ところが日銀は金融緩和政策を変える考えはなく、金利水準や量的緩和は従来通り継続される見通しです。当然、日米の金利差拡大は円安を招き、こちらも20年ぶりの130円台をうろうろしています。貿易収支の赤字など日本の国際収支にかつての力強さは見当たりません。世界経済を牽引する欧米、中国が大きく変わろうとしているなか、日本だけが普段の歩みを変えません、というか変えることができません。

 世界経済を舞台に例えれば、平穏に見えた舞台上に予想もしないシナリオ変更が発生。慌てた脇役の欧州がまず下手に引き下がり、続いて準主役の中国が手を打っていたはずのコロナ対応で期待に反して演技ミスをしてしまい、こちらも時間稼ぎのためにあとずさり始めている。こんな一幕を想定してください。

日本は世界経済という舞台から降りることはできません。

 長年スターとして君臨し、主演を自任する米国はなんとか舞台の中央には立っています。かつて準主役だった日本は、脇役に回るシナリオだったにもかかわらず舞台の急な変更のおかげで「おまえはもう少し頑張って舞台上で自稼ぎして欲しい」と資本主義経済の神の手から指図されてしまったのです。さて、日銀、財務省は私たち観客に次の名演をどう披露してくれるのでしょうか。

世界最大の投資会社、ブラックロックの予想でも日本には魅力を指摘

 世界最大の投資会社、ブラックロックが4月末に2022年の世界経済の見通しを明らかにしました。2021年末に同じ見通しを発表していましたが、ロシアのウクライナ侵攻などを考慮して再度、見通しを練り直したものです。まず欧州経済はロシア産の天然ガスの依存度が高いため、1970年代並みのショックとなる恐れがあり、経済成長率は2〜3%下振れするリスクがあると指摘します。かなり厳しい見通しです。

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