志賀原発 原発直下型が現実に 問われ続ける原発の安全と信頼

 原子力発電所は安全運転を大前提にあらゆる事故を想定して設計し、対応策を講じています。しかし、想定していたとはいえ、現実に発生すると恐怖を覚えます。東京電力の福島第1原発が津波に襲われ、緊急時の電源が停止。ありえないと説明し続けていた事故が重なり、あってはいけないメルトダウンが発生しました。そして今度は直下型地震。しかも震度7。

直下型地震はあってはならない

 北陸電力の志賀原発が2024年1月1日、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震に襲われました。1号機の変圧器で油漏れ、2号機の変圧器では自動の消火設備が起動しました。志賀原発は外部電源が3系統を備えており、電源の切り替えで大事に至りませんでした。また1号機では使用済み燃料プールの水がこぼれ、冷却ポンプが一時停止。ポンプは地震から30~40分後に再起動し、敷地内の放射線量に異常は確認されていないそうです。

 朝日新聞によると、原子力規制庁には2号機の変圧器近くで「爆発音と焦げ臭いにおいがあった」との情報が入り、1日午後5時半ごろに調べたものの、炎は確認されず、北陸電力は「火災は発生していない」と説明していると伝えています。

 正直、ヒヤリとしました。志賀町が震度7に襲われたと聞いた時です。志賀原発は建屋直下に複数の断層が走っており、それが「活断層」か「活断層ではないか」の論議が長年続いているからです。もし活断層であり、そこに直下型の震度7、マグニュード7・6が襲い掛かったら、どんな事態が発生するのか。現状は運転を中止しているとはいえ、想定外が重なればどうなるのか。専門家ではないだけに、根拠のない不安がよぎりました。

原発直下の地震に規制はあるが・・・

 原子力発電所の安全性は、1978年に設置された原子力安全委員会で改めて建屋などの基準が示され、2011年の東日本大震災の福島第1原発事故でテロ対策も含めて全面的に見直されました。古い規制値でも建屋は地震の3倍に耐えられる強度を求められ、メルトダウンを招く格納容器の破壊などを防止する設計基準の達成を義務付けられていました。

 ただ、原発建屋の直下については曖昧です。例えば活断層は地震によるズレなどが計測不能などを理由に建屋の直下にあってはならないとして、もともと建屋直下の活断層が及ぼす安全性は論外となっています。原発直下型の地震についても、10キロ圏内でマグニチュード6・5を想定していました。新たな基準でも、地震が与える建屋の地盤の影響調査をさらに詳細に数値化することを求めるものの、結論はそう変わりません。震源立地下の断層に加えて、 地盤にずれを生じかねないその他の断層や地す べり面も含めた断層等の直上に重要施設を設置 することを明確に禁止するとしています。

 つまり、原発建屋の直下で大地震が起こるような地盤で建設してはいけないし、原発建屋の直下型地震はあってはならないと結論づけているのです。ところが、志賀原発を襲った地震は想定をはるかに超えています。マグニチュードは7・6。建屋の立地地域である志賀町の震度は7。

 私は1980年代、金沢支局で3年間、北陸地方の地域経済を取材していました。取材の主力は能登半島など北陸で多くの計画が浮上していた原発立地です。原発銀座と呼ばれた福井県はもちろん、まだ計画段階で宙に浮いたままの志賀原発(当時は能登原発)の建設計画を取材するため、志賀町はじめ今回の地震で大きな被害を受けた輪島市、珠洲市、七尾市など能登地方は数えきれないほど通いました。

志賀原発の事例をしっかりと検証すべき

 だからこそ、志賀原発の直下で発生した地震の影響をしっかりと問いたい。志賀原発の安全性は、原発直下に活断層があるかどうかで40年以上も揺れ続いているのですから。志賀原発の直下には40年以上も前から活動層があると指摘されており、北陸電力の活断層ではないという説明が認められ、建設された経緯があります。

 その後、福島第1原発事故を契機に設置された原子力規制委員会の調査団が「活動した可能性がある」と判定し、志賀原発再稼働の道が絶たれます。北陸電は判定を覆すため、新たなデータを追加提出。規制委は改めて審査した結果、2023年3月に志賀原発の建屋直下を走る複数の断層を「活断層ではない」とする北陸電の説明を了承しました。

 当時の経緯や取材については、このサイト「From to ZERO」で掲載しています。下記のアドレスからご参照ください。

「能登原発から志賀原発へ40年間続く活断層論議 新増設の難しさを思い知る」

https://from-to-zero.com/green-captalism/notosikaatomicpower40years/

  今回、直下型の地震が襲いました。火災などに至らず、本当に良かったです。ただ、あってはならない原発直下型地震が現実になりました。それは志賀原発だけに起こった偶然ではないはず。大地震が避けられない日本に原発を稼働させる限り、原発直下の大地震が起こったら安全性を確保できるのか。再稼働、新増設を掲げる政府は、必ず国民に説明し、理解を得る努力をしなければいけません。国民は原発の安全性を求め続け、その安全性を信頼できるのかを問い続けなければいけません。

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