賃金はなぜ上がらないのか 満額回答が最後通告 さよなら春闘 さよなら労組
3月16日、自動車や電機などの主要企業が一斉に2022年の賃上げを回答しました。多くの企業が労組の要求額に対して満額で回答しています。岸田首相が新しい資本主義を唱え、成長と分配の見直しの一環として賃上げ率3%超を求めていました。主要企業の賃上げ率は軒並み2%を超えていますが、全体の賃上げ率は3%に届きそうもありません。
これから経営環境がより厳しい中堅・中小企業の賃上げ交渉が本格化します。すでに顕在化していた原材料の高騰はロシアによるウクライナ侵攻、円安の進行が加わり、一段と過熱化する恐れがあります。官製春闘ともいえる今春闘は政府の後押しがあって主要企業は満額回答したにもかかわらず、全産業の賃上げ率の平均値は2%を超えるかどうか。
労組の声は聞こえたか
今年の春闘も労働組合の声は聞こえてきませんでした。声高に響き渡ったのは、岸田首相と十倉経団連会長、トヨタ自動車の豊田章男社長ら日本経済を主導する面々ばかりでした。連合はじめ金属労協など産別組合、個別企業の労組はどんな考えで臨み、今回の回答内容を評価するのでしょうか。
主要企業が相次いで満額回答している流れをとらえて、労組からは「この数年間と比べて勢いが違う。中小にも広がって欲しい」との意見がありますが、まるで経済評論家のコメントのようです。連合の春闘方針は4%程度の賃上げでしたが、最初から実現できるとは思っていない目標だったと裏付けているようです。建前であることを十分承知のうえで「我々の切実な思いを裏切る」ぐらいのコメントを出しても空滑りはしないはずです。
日本の給与水準は、1990年代からほとんど上昇していません。この数年間をみても、賃上げ率は低迷していました。日本の労働者というか給与取得者の実質年収は、低迷する物価上昇を考慮しても下がりはしても上がりはしていないはずです。
しかも、昨年から世界の原材料は上昇傾向が続いており、昨年後半から日本でも消費財の値上げが続いています。労組が過去数年間の傾向値をもとに春闘の回答を評価するわけがありません。今年、来年の消費者物価などを予測して今春闘の回答を評価したら、2%超であったとしても十分ではなく、実質目減りになるかもしれません。