ふるさと納税は楽天経済圏の拡材?三木谷会長 ポイント付与禁止に反対
楽天グループの三木谷浩史会長が、総務省が公表したふるさと納税に対するポイント付与禁止に反対を表明しました。「地域振興や地域の自律的成長を支援するために、地方自治体に負担を求めないポイント等のプロモーションなどを通じて、ふるさと納税を推進してきた」と強調し、総務省の禁止措置は「地方自治体と民間の協力、連携体制を否定するものであり、各地域の自律的努力を無力化するもの」「地方の活性化という政府の方針にも大きく矛盾」と主張します。
「自治体との連携を否定」と主張
総務省が仲介サイトによるポイント付与を禁止するのは、還元するポイントの原資が自治体が仲介サイトへ支払う仲介料から捻出されていると判断したからです。ふるさと納税の返礼品を巡る寄付者の争奪戦は、これまでもその過熱ぶりから問題視され、歯止め策が打ち出されています。
もともとは、自身で選んだ地方自治体に寄付という形で納税し、その自治体から返礼品を受け取る税制でした。しかし、寄付金を全国から集めるため、返礼品は次第に豪華商品に衣替えしてしまい、自治体同士の競争も税制の枠組みを逸脱する動きが目立ちました。
返礼品の上限は寄付の3割までに
総務省は返礼品の豪華さを競う自治体による競争を抑制するため、2018年度以降、寄付収入が突出して多い自治体に対して交付税を減額する措置に出ました。さらに翌年の19年度は寄付金額の30%を上限に返礼品を設定するように求め、過熱化に冷水をかけてきました。
例えば2018年度に全国トップの約498億円を集めた大阪府泉佐野市。2019年度、国が交付する地方交付税交付金の金額が前年度比89%減の約53000万円となり、同市は「減額は違法だ」と訴訟を起こす事態に。地場産品ではないAmazonギフト券を返礼品として取り扱ったことも問題視され、ふるさと納税制度から除外されたこともあります。 結局、指定除外は違法と国を提訴した訴訟で最高裁が支持し、ふるさと納税制度に舞い戻ってきました。同市のホームページには復活の報告を大きな文字で伝えています。
仲介サイトを使えば、返礼品とポイント
それでも過熱感に歯止めがかかりません。最近は、仲介サイトを通じてふるさと納税する利用者が増え、寄付行為によってサイトで別の買い物などに使えるポイントも手に入るようになりました。「さとふる」などの広告はテレビやネットで見かける機会が増えているので、実感できるはずです。
ふるさと納税は総額1兆円に迫る大型税制にまで成長しました。北海道は全国の都道府県で1位を占め続けており、一般会計368億円の紋別市はふるさと納税による歳入で100億円を見込んでいます。ふるさと納税制度に頼らずに地方行政を維持できない状態です。
しかし、ふるさと納税はあくまでも納税者にとって税金の一部。返礼品をもらって得した感を味わえますが、税金は住んでいる自治体の行政、社会福祉などを支える財源です。首長はじめ行政が住民の要望を汲み取り、街づくり、福祉の充実に取り組んでいるのか。無駄使いをしていないのか。税金を納めているからこそ、本気で監視する気持ちになります。ふるさと納税の寄付者増で税収急減に慌てている東京世田谷区の窮状を見てください。
税制はネット販売の拡販材ではない
三木谷会長は自治体との連携を継続するため、「皆さんの声を代表して政府、総務省に強く申し入れたいと思います」とオンライン署名を始めています。その思いはそのまま理解したいですが、自社の楽天グループのネット販売の拡大、言い換えれば楽天経済圏の拡大に不可欠な存在となっているのも事実です。
公共の電波を使って携帯事業に挑む三木谷会長に対し、公共財と民間事業の違いを説明する必要はないでしょう。国民生活、日本を支える税制は、ネット通販の拡販材ではありません。自治体支援と楽天経済圏の拡大を重ね合わせ、ふるさと納税を囲い込むのはどうみても辻褄が合いません。