東芝、三菱が教える1㌦200円の日本 経済衰退を告げる時計の針が回り始めた

 1ドル150円を突破しました。21日金曜日と想定しましたが、1日早い20日夕方。円高誘導の策を持たない日銀や財務省の狼狽ぶりにトレーダーが呆れてしまい、早めに結着つけようと150円の壁を打ち破ったのでしょう。152円台に届いた段階で日銀が介入しましたが、22日には150円に再び近いています。財務省の財務官は「介入資金は無限にある」と言い張っても、日銀の手は読まれています。

たがが外れた円安

 トレーダーの視界には160円が鮮明に見えています。週末はワインでも飲みながら、空回りする財務省の介入をサカナに週明けのシナリオを考えているはず。1週間後、160円のラインが見えたら170円へ。酔った目には1ドル200円もちらつくかもしれませんが、気がついたら為替相場を知らせるデジタルサインに200円が輝いているかも。

 32年ぶりの円安は日米金利差の拡大が主因です。2022年1月4日のドル円相場は116円。5年ぶりの円安。日米の金利差拡大は観測から現実となり、円安はブレーキを失い10ヶ月後に32年ぶりの150円台。かなり振れました。たがが外れるとはこういう時に使う例えなのでしょう。

通奏低音が聞こえますか、「日本経済は衰退しているよ」

 無口で策を失った日銀に目を奪われ、通奏低音のように流れる「ささやき」を聴き逃してはいけません。予想以上に速いテンポで進行する円安は、「日本経済を支えてきた企業の力が衰えている」と囁いでいるのです。兆円単位の経営破綻は見当たりません。日本経済への警鐘はほんのわずかに鳴るだけ

 しかし、電池切れした時の目覚まし時計の様子を思い出してください。時計の針が数秒ごとに飛び、電池切れを警告します。チッチッと微かな音が聞こえるように視覚に訴えます。

 32年ぶりの1ドル150円を記録した10月20日、三菱電機が製品の検査不正に関する最終報告を公表しました。昨年明らかになった製品検査の不正は新たに全国11ヶ所の工場で70件が加わり、国内の17ヶ所合計197件に増加。極め付きは不正事件で2021年10月に引責辞任した柵山正樹元会長は1992年から管理職として不正を開始したそうです。不正が33件と最も多い姫路製作所は、経営者が引責辞任した後も2022年8月まで不正が続いてたそうです。

三菱電機は元会長自ら不正を指揮

 不正を指揮したトップが引責辞任し、社長自ら陳謝しても社内の意識は何事もなかったかのように変わらない。驚くことはないです。日本企業の常識ですから。上司の指示に従わなければ、エライことになります。不正と知っていても、異論を挟むことは日本企業にとって非常識そのもの。

 経営再建策で七転八倒する東芝を見てください。歴代の社長同士の嫉妬と権力争いが経営指標などの架空計上を招き、経営の屋台骨はがたがたに。経営再建のゴールを持たないまま、医療など将来有望な事業を手放した結果、社長を含め走馬灯のように経営陣がくるくる変わり、再建計画も定まらない。自らの経営再建を放棄して外部に公募するも、結論はまだ霞の中。誰も止められません、変えられません。

 三菱電機も東芝も、日立製作所と並ぶ総合電機の御三家といわれた名門です。発電機、工作機械、半導体など電子機器、コンピューターなどあらゆる産業を通じて日本経済を支え続けました。その東芝、三菱電機が朽ちた看板すら支えきれず、一度踏み外した階段を再び駆け上がることができません。

東芝、三菱は例外ですか

 東芝、三菱電機は例外でしょうか。日本の企業に蔓延っている病巣がたまたま明らかになっただけです。最近の日本電産を見てください。カリスマ経営者の永守重信氏は自らの後継者を選ぶことができず、日経平均をリードするとまでいわれた同社の輝きは失っています。誰もが磐石と考える成功を収めた企業が慢心し、経営変革を忘れます。異論を挟む余地は許さず、経営を救済するチャンスすら手放します。

日本経済の電池が切れる前に

 為替相場が経済力の指標と捉えれば、歯止めがかからない円安は「日本経済売り」を示しています。東芝、三菱電機の昏倒は、電池切れ寸前の目覚まし時計が日本に目を覚ませと呼びかけているのです。耳を引き裂くような警鐘は鳴りませんが、なんとか目を覚ませと。このまま電池が切れたら、静かに眠る続けるだけだと。

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