残念な会社 パナソニック 優良企業の体力を無駄使い、頭と身体がバラバラに動く (その1)
2009年に買収した三洋電機はどうですか?優れた技術開発力を持ちながら収益が悪化し続ける三洋電機を救済する形で、当時の大坪文雄社長は買収を決断しました。技術力はあっても経営力がないと言われ続けた三洋電機が主力事業として育てた太陽光電池、電池、白物家電です。期待通り、パナソニックの収益を支えます。
例えば太陽光電池の開発はパナソニック自力の開発に遅れがあり、地球環境にやさしい再生可能エネルギーとして期待されいました。それだけに三洋電機の買収で成長市場での失地回復が期待されました。しかし、太陽光電池でも中国メーカーの値下げ競争に巻き込まれ、2021年に撤退を決めています。
「VHSかベーターマックス」。VTRの規格争いとして日本ビクターとソニーが激しく競い、日本ビクターが勝利しました。傘下に収めていた松下電器産業(現パナソニック)は映像分野でもソニーの強い分野に進出しました。こちらもVTR時代の終焉とともに、テレビなど家庭用映像機器は不採算事業に陥ります。
パナソニックはソニー同様、米映画会社も買収しました。1990年、米MCA(現ユニバーサル)を61億ドル(当時で7800億円)で買い取ったのです。しかし、その後の経営は右へ左へと揺れます。当時の担当専務は言いました。「アメリカの映画事業はわからない。松下には経営できないよ」。1995年、買収から5年後に手放します。
松下幸之助さんから合格点はもらえるのか
買収や提携の事例はまだまだありますが、今回はそろそろここで終えます。これまでの経緯で判明しているのは、買収や提携など事業戦略は的を射ているのですが、モノにする経営ができないのです。歴代の社長が松下電器、あるいはパナソニックの事業改革、経営改革しようと懸命に考え、決断します。
しかし、その決断を組織全体として共有し、実際の事業として肉付けする人材と実行力を備えていなかったのです。備えていなかったというのは間違っていました。権限を与えられていなかったという表現が正しいかもしれません。経営環境に合わせて事業戦略の変更が迫られているにもかかわらず、社長の決断に異を唱えるのは不可能でした。
それがパナソニックが多くの買収や提携を繰り返しながら、結局は事業構造を大きく変えることができない。トップの頭ではできるはずと考えていることが実は組織の手足がバラバラに動いていまい、成果として現れない悪循環から抜け出せないのが、今のパナソニックなのです。
創業者の松下幸之助さんは経営の神様として多くの経営者から尊敬を集めています。不況になると、松下幸之助さんの本が売れるそうです。苦境の時こそ松下哲学が正解を示唆していると信じられています。
パナソニックは、事業改革では松下幸之助さんから合格点をもらえるのでしょうか。