65歳から始めたメディアサイト)AIで小説、SEOできるけど 楽しみを奪われちゃ叶わない!

 芥川賞を受賞した九段理江さんが作品の執筆に人工知能(AI)を活用したと話しています。受賞作「東京都同情塔」のうち5%前後を生成AIで作成した文章をそのまま使ったそうです。九段さんは「自分の創造性を発揮できるようにしたい」と説明します。

芥川賞作家も生成AIを利用

 ブログの制作支援として生成AIを使ったサービスも増えています。「記事を書く手間が大幅に削減できる」がウリ。毎日、原稿を書いていると、AIを使ってみたいと思う気持ちが湧くことに違和感はありません。ただ、頭に浮かんだイメージを「文章に表し、何度も書き直す作業が楽しい」という気持ちを上回ることはないのです。65歳から試行錯誤しながら、メディアサイトの制作を楽しんでいる身としては「AIに楽しみを奪われてたまるか」と思うぐらいです。

 生成AIは人間が真似できないほど過去のデータを参考に繰り返し学習しながら、利用者が問いかけた条件設定に合わせた答を創案します。新聞記者として40年以上生きて手にした私の経験や技術なんて、あっという間に抜き去ってしまうのでしょう。寂しいといえば寂しいし、虚しい。

コピペと同じ?

 だからこそ、作家も生成AIがどのような文章を創り出すのか試してみたくなるはずです。自身が考案したモチーフを題材としてAIに与えれば、どんな文章を創案するのか。九段さんは小説の題材としてAIをテーマに加えていたそうですから、AI作成の文章も作品に織り込んだのでしょう。AIの文章を登用することにいろいろな意見がありますが、これまでも作家や学生がコピー&ペーストで作品や卒業論文などを作成していた事例が頻発していましたから、驚くことはありません。

 ブログの世界も同じ状況です。つい最近、ブログ制作を支援するサービス会社からも「SEOに強い記事構成が作れる」を謳い、サブスクリプションの提案メールが届きました。1クリックで利用できるAIブログ生成ツールだそうです。検索上位表示を狙うキーワードを入力するだけで調べ上げ、記事の見出し構成を書き上げるそうです。

ブログサービスでもリライト、SEOに

 本文の作成、公開済み記事のリライトもします。「記事構成に加え、記事本文や記事タイトル、導入文の作成もAIで生成することができるので、記事を作成する手間を大幅に削減することができます」というのですから、ブログ制作者は楽。サブスク料金はライトが330円、スタンダードで1980円。

 一人でサイトを制作していると、文章作成のみならず、レイアウト、写真撮影など結構やることがあります。なんとか仕上げてサイトにアップしても、誰も読んでくれないとさすがにちょっと寂しい。「330円ぐらいなら、お試しでも」と思いますが、やっぱり手を出す気にはなりません。

毎日の楽しみをわざわざお金を払う!?

 毎日、楽しみながら体感している文章作成やサイト制作に、わざわざお金を払うなんて本末転倒。サイトの運営を事業化している知人は「SEO」を連呼していましたから、SEOを改善する生成AIに魅力を感じるのかもしれませんが、こちらはアマチュア。「本当はサイトで稼ぎたい」という思いを秘めながら、誰も読まない記事を書き続けられるのも、アマチュアゆえに許されるわがまま。

 プロとアマの境目は「稼げるブログ用の記事、文章を生み出すことを最優先する」、それとも「文章を書き上げる過程を楽しむことが優先」の違いなのでしょうね。生成AIは使ったことがありませんが、生成AIはなんて答えるのでしょうか。

 生成AIに限らず、メディアサイト制作を継続するうえでいつも思い出す人物がいます。西脇順三郎、種田山頭火の2人です。西脇さんは散歩しながら、自然と瞑想を楽しみ、詩作を続けていました。山頭火さんはが放浪しながら、酒を飲み、歌います。時にはしらみに体中を食われ、かきむしりながら手持ちの金の無さを嘆き、それでも酒を飲み続けます。

 メディアサイトに記事を毎日書き上げる思いは、彼の一句と重なります。

 「歩かない日はさみしい、飲まない日はさみしい、作らない日はさみしい」

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