南太平洋 12 ニューカレドニアは天国に近い島、 違います!日本に近い国です
フランスのマクロン大統領は12日、独立を否定した投票結果を歓迎しまし、独立をめぐる投票はこれで終わりとの考えを示しています。
マクロン大統領の念頭には南太平洋での権益と安全保障の再構築があります。ニューカレドニアの独立が実現したら、タヒチなど他の仏領ポリネシアの独立問題が燃え上がるのは確実です。しかも、中国が影響力を広げている南太平洋でのフランスの存在感が薄れてしまいます。フランスはオーストラリアと原子力潜水艦の建造計画を決めていましたが、2021年の今年に米国と英国に契約を反故されるスキャンダルに見舞われました。
国と国との契約が突然キャンセルになるのは、フランスにとって顔に泥を塗られるのと同じです。しかし、それだけ中国の南太平洋進出が露骨に進められ、米英の代理人でもあるオーストラリアとしてもフランスよりも米英とタッグを組み強力な対抗勢力を築くしかないとの判断があったのも事実です。それだけにフランスは太平洋での安全保障の拠点としてニューカレドニアを死守する必要がありました。
日本とって経済安保を構築するうえで欠かせない国
それでは日本はどう関わるのか。遠い南太平洋の独立運動として眺めていて良いのかどうか、です。日本政府は中国を念頭に経済安保を盛んに声高に唱え始めています。その延長線上で考えれば、南太平洋の重要性は一段と高まっています。中国は30年以上も前から台湾の孤立化を目指して国連など国際機関での多数派工作として太平洋の島嶼国を巨額の経済支援をカードに取り込み、台湾との断交、あるいは関係切り崩しを図っています。
経済力が弱い島嶼国としては背に腹は変えられないのが本音です。もしニューカレドニアが独立へ移行したら、中国が経済支援も含めて急接近するのは確実と見られていました。中国との関係がこじれているオーストラリアの有力紙シドニー・モーニング・ヘラルドも中国と南太平洋の安全保障に記事の焦点を合わせていました。
日本にとってニューカレドニアはフランス領の一国にとどまらず太平洋の安全保障問題として関与する必要があります。言わずもがなですが、日本は米国や中国と違い、武力を誇示して存在感を示すことはできませんし、すべきではありません。事が大きくなる前に将来起こりうるべき事案に向けて早めに先手を打たなければいけません。
米国や英国、オーストラリアに続いてフランスとどう太平洋地域で連携するのか。太平洋の島嶼国をこれまで以上に助け合う関係を広げているのか。より緊密に深く結びつく施策が求められています。かつて南太平洋島嶼国会議で米国の国務次官補を務めていたウィンストン・ロード氏にお会いした時に将来の南太平洋の安全保障について「将来の中国の動向を先読みして島嶼国の関係をしっかりと強化しておく」と強調していたのが強く印象に残っています。
経済安保は半導体だけではありません。ニッケルなどレアメタルの確保は勝るとも劣らず優先順位が高いのです。世界の資源などの購買力ですでに中国と「買い負け」している日本です。経済、政治の両面で中国との格差が開き、単独の外交力はさらに低下していきます。アジア太平洋の中で日本の国民が平和に過ごすためには、ニューカレドニアを「天国に近い島」と捉えている余裕はありません。南太平洋は今、欧米と中国が衝突し合い、台湾、南沙諸島などの領有問題などで「天国と地獄」と向き合う地域となっていることを忘れるわけにはいきません。