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資本金の増減で「下請けいじめ、経営の窮地」を逃れる 大企業、中小企業の線引きは蜘蛛の糸

 資本金の増減資が企業経営を左右し始めています。資本金の規模で大企業と中小企業が線引きされ、それが税負担や法規制に影響を与えるからです。大企業か、中小企業か。どちらを選ぶかで稼ぎ出す利益が変わってします。奇妙です。その背景には日本経済の成長力の弱さが一因に。成長力を生み出す経営が達成できないので、目先の利益を確保する狙いで資本金の増減資に経営者が消耗する。なんとも情けない話ですが、これも日本経済の現実です。

資本金の操作で利益を捻り出す

 読売新聞によると、公正取引委員会が企業が資本金を意図的に増減させて下請法の適用外とする「下請法逃れ」対策を検討します。公取委は購入した製品の代金を契約よりも少ない金額しか支払わない「下請けいじめ」を摘発していますが、発注企業が下請け企業を適用外に移すため、資本金の増資を求めているそうです。事業拡大など経済合理性に従った増資ならともなく、下請けいじめから逃れるために増資を求めるのは明らかに企業経営に損失を与えます。

 下請法は、発注企業(親企業)と下請け企業の資本金額で適用が決まります。資本金の線引きは発注企業が3億円超、下請け企業が3億円以下、あるいは発注企業が3億円以下~1000万円超、下請け企業が1000万円以下が目安です。取引する企業が線引きを超える資本金に増やせば、公取委の摘発を逃れる適用外になる可能性があります。発注企業が自ら減資する例もあるといいますから、苦し紛れに選択させざるを得ない窮地だと理解しますが、自らの実力を貶めるだけです。

 公取委が資本金の増減資による適用逃れに対し、どのような対応策を講じるのでしょうか。資本金の金額をいじっても、適用逃れは公取委と企業の追いかけっこです。規制の網を広げれば、その網を逃れる対応策を新たに編み出します。大企業が資本金の小さい子会社を作り、その子会社と下請け企業が取引する形にして、適用を逃れる事例もあるというのですから、取引の正常化は企業経営者の倫理観に頼らざるを得ないのではないでしょうか。

1億円超は外形標準課税

 資本金1億円を巡る攻防も始まっています。1億円超の大企業は「外形標準課税」で課税されますが、課税対象から外れるため、資本金を中小企業の「1億円以下」に減らす動きがあります。税法上では、資本金が1億円以下の会社は「中小企業」と位置づけられるため、多くの優遇措置が設けられています。たとえば、繰越欠損金を控除扱いできる、所得に軽減税率が適用される、800万円以下の交際費を損金算入できる、法人事業税の外形標準課税が対象外になるなどの優遇措置があります。

 最近では毎日新聞やJTBなどがあります。毎日新聞は41億5000万円から、JTBは23億400万円からそれぞれ1億円に減資しました。中小企業への移行によって節約できる税金は経営が厳しい時にはかなりの支えになります。大企業から中小企業へ定義を変えて、世間的には経営の安定性や信頼性を表す「大企業」と胸を張れなくなりますが、それはメンツの問題。背に腹は変えられない。それほどの窮状に立っていると察してください。

 政府は税制改正で大企業逃れに手を打ちました。2025年4月以降の事業年度では、「1億円超」に加え、前の事業年度に課税対象だった企業は、減資しても「資本金と資本剰余金の合計が10億円超」の場合は対象のままとなりました。

 実は私も資本金1億円に減資する方策を検討した経験があります。勤めていた会社のグループ会社社長に就任したのですが、黒字ギリギリの事業内容を改革する一策として考えました。本業の改革はもちろん、実行するのですが、借入金をできるだけ早く返済するためには1円でも多く利益を積み上げたかったのです。会社の事業規模が小さい割に資本金が大きく、大企業扱いで外形標準税を課せられるのは身の丈に合わないと判断したのです。結局は出資元の経営事情もあって見送りしたが、減資の交渉に精力を尽くすより、事業そのものを鍛え上げることに努力するのが賢明だと痛感しました。

中小企業の育成は成長力を取り戻す近道

 公取委や経産省の中小企業庁は「下請けいじめ」を解消するために、下請け企業の声を集めて毎年「下請けいじめ」企業名を公表しています。直近に中小企業庁の公表したリストを見ると、最低の評価はタマホーム、エディオン、一条工務店の3社。ヤマト運輸、大東建託もかなり悪質と見られています。公取委や中企庁の調査で広告などで知る「表の顔」と違う「裏の顔」が浮き彫りになり、消費者の企業イメージは悪化、事業に影響を与えるのは必至です。下請けいじめと公表されていない大企業も含めて、中小企業の育成に努めるとともに、自らの事業改革に取り組んで欲しいです。それが日本経済に再び成長力を取り戻す近道です。 

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