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あの花井組は、なぜ経産省「健康経営優良法人」に選ばれたのか?認定調査に盲点があちこちに

 あの「花井組」が公的機関の優良法人を認定する調査の盲点を暴いてしまいました。札幌市西区の建設会社、花井組の社長が社員に日常的に暴行していた映像が拡散し、同社の経営体質が問題視されていますが、花井組は札幌市から「札幌SDGs企業登録制度」など社会貢献や社員に対する福利厚生で5つの登録、認証を受けていました。実は経済産業省の「健康経営優良法人」にも選ばれています。暴力が横行する会社がなぜ札幌市や経産省から評価されてしまったのか。認証制度を支える調査の盲点を考えてみました。

花井組は札幌市からも5つの認証・登録

 花井組が札幌市から登録・認証されていたのは、「SDGs企業登録制度」「ワーク・ライフ・バランスplus認証制度」「まちづくりスマイル企業認定制度」「エコメンバー登録制度」「消防団協力事業所表示制度」の5種類です。社長が暴行を振るった動画が拡散した後、花井組から札幌市に登録辞退の申出書が提出されたそうです。登録・認証を見る限り、札幌市の企業として地域貢献に努める企業として認知されており、プロバスケットボールのBリーグ「レバンガ北海道」ともサポートシップを契約していましたが、こちらも解消したそうです。

 札幌市からライフワークバランス制度などが評価されている会社ですから、花井組は、経産省の健康経営法人にも選ばれていました。

 健康経営法人とは何か。あまり聞き慣れない法人ですが、経産省のHPでは次の通り説明しています。

 健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから社会的な評価を受けることができる環境を整備することを目的に、日本健康会議が認定する顕彰制度です。
本制度では、大規模の企業等を対象とした「大規模法人部門」と、中小規模の企業等を対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門を設けています。「健康経営優良法人」に認定されると、「健康経営優良法人」ロゴマークの使用が可能となる他、自治体や金融機関においてさまざまなインセンティブが受けられます。

 花井組は中小規模法人部門で認定されていました。全国健康保険協会北海道支部は、花井組を2022年健康優良法人「中小規模法人ブライト500」の好例として紹介しています。

 それによると、「わが社のモノ作りは健康つくりから!」をメインに「これからの建設会社は人づくりが最優先される時代となります」と企業理念を掲げ、①メタボリックシンドロームの排除 ②禁煙率100%の実行 ③心も体も柔軟維持の3点を提示して、地域密着型企業としての責務を果たすと宣言しています。具体的には、メンタルヘルス対策として毎週水曜日をノー残業デー、有給休暇の取得と周知を進めるとともに、心と家族の健康づくりでは家族同伴バーベキューなどを開催しています。

2022年は好事例事業所に

 実践していたどうかはともかく、認定を得るためには申請が必要です。北海道支部のHPには申請書も掲載されており、企業の概要、社長の健康に対する考え方、実施している制度・施策、健康診断の結果などかなり細部に渡って質問しています。調査の集計は日本経済新聞社グループの日経リサーチが担当しており、企業調査の実績は豊富で信頼性の高さで評価されています。

 好事例事業所として2022年に認定された花井組は当時、従業員17人の会社ですから。調査票を事細かく記入するのは大変な作業。社長が申請書をチェックして提出しているはずです。

 調査の盲点はいつくもあります。私は新聞記者時代、多くの企業調査を実施して新聞紙面に記事として掲載しましたが、経験上調査票が現場の実態を直に反映するわけではありません。嘘偽りを書き連ねているとまではいいませんが、優良企業であるとの対外的な評価を得たいと考え、現実とはかけ離れた企業姿勢や数字を記入する企業があります。

 調査会社もその虚実を見抜くため、調査票に数多くの項目を記入してもらい、回答内容から辻褄が合わない数字や事実を発見し、評価を下すわけです。もっとも、花井組の場合のように社内で殴る蹴るの暴力行為を調査票から把握するのは不可能です。

 だからといって、例えば健康保険協会の北海道支部に確認したとしても、支部で暴力行為を知っているかどうか。評判が悪い会社は地元なら多くの人が知っているでしょう。申請する以前に、健康経営優良法人の認定を拒否するでしょう。

調査票だけに頼らず、現場取材が必須

 盲点というか落とし穴はまだあります。経産省が進めている認定制度ですから、健康経営優良法人はある程度の数が必要です。厳密に調査した結果、大企業はともかく中小企業は10社程度なんて数字では格好がつきません。毎年実施している認定制度ですから、着実に効果を上げている数字を残さないと来年度の予算取りに支障をきたします。

 国や自治体など公的な認定・登録制度は元々、無理があるのです。新聞社の場合は、対象となる企業を実際に取材している記者を通じて社内の空気、社員の声などを確認して判断します。調査票から得られる結果と食い違う事例は多くはありませんが、かならずあります。

 経産省などが「優良」とのお墨付きを与える制度なら、なおさら現場取材が必要です。申請された調査票を参考に関係団体と協議ながら、選定しているとしたら「花井組」に続く事例がまだ隠れているかもしれません。調査票に頼るだけでは信頼できないのです。花井組が身をもって証明しています。

まずは感謝の気持ちからスタート

 もし、健康経営優良法人をめざすとしたら、お互いを尊重し合う「感謝」の気持ちをまず思い出しましょう。

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