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古い人物紹介の新聞記事

スズキとダイハツ統合へ王手 トヨタ主導の会社に出資

 21日の会見では記者からの質問に答える形で、鈴木、奥平両社長は共に「商用車から乗用車、グローバルに広がる」と話しています。軽商用車の電動化に目処がつけば乗用車にも広げ、スズキとダイハツは少なくとも電動化で全面的に提携するに間違いありません。そうなれば国内販売の消耗戦が解消され、発展途上国を中心にしたグローバルカーとして軽自動車は復活します。

仕掛け人は誰か?

 今回の仕掛けは誰が?という疑問は湧きます。会見では豊田章男社長が口火を切った印象を与える発言になっていますが、振り付け師は鈴木修さんと推察します。鈴木修さんは軽自動車のマーケットを自らの力で創造し拡大した自負があります。軽自動車を「芸術品」と呼ぶほどです。

 もちろん、細かいシナリオまで描いたわけではありませんが、これまで通奏低音のように響いていた提携戦略の最終仕上げとして最後の喝を入れたでしょう。画竜点睛を欠いていた過去40年の提携戦略に最後の一筆を加えたのです。その決断に背景にあるのは、スズキはもはや単独で存続できないという危機感です。

軽自動車のもう一つの雄であるダイハツはどうなの?と疑問を思うかもしれません。ダイハツはトヨタの子会社、トヨタグループの傘の中で生き存えます。もっとも、トヨタとダイハツの提携関係は過去、感情的な思いも加わり捻れに捻れてグループとしての一体感を失いかねたこともありましたが、今や完全にトヨタの子会社です。わずかに残っていた「ダイハツ」の意地も消え失せています。

スズキの危機感はなぜ大きいのか。単年度で見てもあまり意味はないのですが、まずは2021年3月期決算を例に。地域別をみるとアジアはインドでトップシェアを握り大黒柱に育っているとはいえ、コロナ禍の影響もあってアジアの営業利益率は4.0%。日本国内は6.2%で、営業ベースで減収減益決算を支えました。

 しかし、日本国内市場の先行きは楽観できません。軽の主力市場である地方は人口減が加速しているほか、販売網を支える小規模な業販店の経営も厳しさを増しており、軽市場の屋台骨は大きく揺らいでいます。

 にもかかわらず、スズキとダイハツはトップシェア争いで消耗戦に終わりはありません。2020年の販売をメーカー別で見ると1位ダイハツ、2位スズキ、3位ホンダ、4位日産と続きます。ダイハツの軽自動車届け出台数は53万6292台、スズキは52万363604台とわずか1万2688台の差。

 販売の内実も実際に新車として販売したかどうか。販売したことにして中古車として転売する「新古車」の存在が陰にちらつきます。相手の販売動向を見ながら書類手続きする、だから僅差の結果になります。

 軽自動車を生産するメーカーはスズキ、ダイハツのほかホンダが独自生産していますが、スズキはマツダ、日産自動車、三菱自動車に、ダイハツはスバルにそれぞれOEM(相手先ブランド供給)しています。つまりスズキとダイハツの2社が軽の生産、価格主導権を握っているわけです。

 国内の軽市場で利益を維持するにはどうするか。スズキとダイハツの過当競争を止めれば良いのですが、公正取引委員会から独占禁止法の疑いを掛けられるリスクが大きいうえ、販売網の維持を考慮すれば販売の母数を下げるわけにはいきません。

 ならばスズキとダイハツが事業統合すればどうか。万が一、実現すれば市場の6割を独占する寡占状態になり、公取委が問題視するのは間違いないです。

30年以上も前からダイハツとの統合に執念を燃やす

 しかし、ここに執念を燃やす人がいます。鈴木修さんです。ダイハツと統合案は思いつきではありません。実はもう30年以上前から炭酸水の泡のように現れては消えていますが、泡は決して消えません。

 「アルト」を発売して軽市場を創造し、排ガス規制、軽の規格変更など軽自動車市場が崩れ去る経験を何度も切り抜けた鈴木修さんにとって、国内市場の縮小、環境負荷軽減の電動化など近未来の市場が見える鈴木修さんの目にはダイハツを取り込むしかないとの思いが強まるばかりでした。

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