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VWは工場を閉鎖し、トヨタが農業を始め、日本特殊陶業はエビを育てる

 フォルクスワーゲン(VW)の労働組合が12月2日、6年ぶりのストライキを打ちました。3ヶ月前の9月、会社側は創業以来初めてとなるドイツ国内の工場閉鎖、さらに賃金削減を発表。労働組合は工場閉鎖を回避する代案を提示したものの、経営側は拒否。反発した労組は無期限ストに向けた警告を込めて短期のストを打ちましたが、「工場閉鎖、大量解雇、賃下げはとても受け入れられない」と表明。労使双方ともに譲る気配はないだけに、自動車が基幹産業のドイツ経済を揺るがす事態に発展しそうです。

日産も大リストラ

 VWだけではありません。大規模なリストラは日産自動車もすでに発表。世界生産の2割を削減するとともに、従業員の7%に相当する9000人を解雇する計画です。VWの労組と違って、ストライキを構える動きはないようですが、世界を代表する自動車メーカーの屋台骨が大きく揺らぎ始めているのがよくわかります。

 もっとも、経営危機が突然、目の前に浮上したわけではありません。ここ10年間、自動車産業は「100年に一度の変革期」に直面していると言われ続けています。地球温暖化を防ぐため、CO2など温暖化ガスを排出するエンジン車から電気自動車(EV)への移行が始まっており、自動車会社の経営を根底から変革しなければいけません。

 中国メーカーの大躍進もあります。中国政府は次世代車の主流となるEVの開発・生産を後押ししており、中国市場は安価な中国製EVが制覇しており、欧米や日本を駆逐しています。直撃を受けた日産は大リストラに追い込まれ、三菱自動車は中国の生産から撤退を決めています。直近でもGMが中国の不振で50億ドル、日本円で7500億円の損失を出したと発表しています。

 VWや日産の大リストラは、自動車に限らず産業構造が根底から変わる時の阿鼻叫喚かもしれません。エンジン車からEVへシフトするとはいえ、その過程では巨額の研究開発・設備投資が必須で、その一方でエンジン車関連の基幹部品が不要になるため、関連生産設備の廃棄や人員体制の見直しも迫られます。当然、切り替わる大きな痛みと歪みが生じます。その企業の体力が思いっきり試されるのです。

 この移行期をどう切り抜けるのか。日本の自動車各社、部品メーカーでは大きな雇用の変革を予想し、試行錯誤を重ねる動きは始まっていました。

トヨタの農業は生産方式を応用  

 例えばトヨタ自動車の農業はどうでしょうか。10年ほど前、トヨタが「国内工場の閉鎖に備えて、自社や系列の雇用を維持する受け皿として農業を考えている」という意外な情報が耳に入ってきました。世界一の自動車メーカーとなったトヨタは、世界各地に生産体制を整えており、国内の生産能力が過剰に陥る可能性が出てきたからです。なにしろ、日本国内の市場は縮小する一方。余剰分を輸出で補うことは経済的にも政治的にも割りが合いません。

 農業は多数の労働力が必要で、工場を閉鎖しても新たな雇用を創出できます。遠い他の工場へ転勤することもありません。トヨタが農業に進出するメリットについての解説を聞くと、納得してしまいました。

 トヨタの農業とはどんなものか?一例として「豊作計画」はどうでしょう。トヨタの生産方式の発想を取り込み、実証調査を始めています。広範囲に広がる水田を集約的に管理し、効率的な農作業を実現するクラウドサービスです。トヨタのHPによると、全国94の農業経営体に導入されており、作業工程やコストの異常管理を通じて育苗工程での作りすぎなどのムダを削減するなど成果を上げているそうです。米作だけでなく、野菜や果樹、畜産など幅広く対応できるシステムに磨きをかけています。受注量、人員、生産・出荷、在庫の情報を一括管理すれば、廃棄ロスや出荷遅れを最小限に抑制できるほか、管理業務の負担も軽くなります。

 自動車産業の頂点に立つ自動車メーカーが変わり始めたら、支える部品メーカーも変わらざるを得ません。EVで減少するであろう売り上げや人員を補うには力不足であって新たな発想で挑戦することで経営多角化の可能性を探っているようです。

日本特殊陶業はエビ養殖

 エンジン部品のスパークプラグで世界シェアトップの日本特殊陶業は2024年7月、エビの陸上養殖を行う新会社を設立しました。得意とするセンサー技術を応用して水質管理を向上させ、畑違いの養殖事業に挑みます。陸上養殖の課題である水質管理にセンサー技術を応用、水質に合わせた養殖の作業を指示できるとしています。、陸上養殖が未経験でも事業化できるトータルソリューションシステムを提供するそうです。

 エビの陸上養殖は場所を選ばず、海洋汚染の影響を受けないメリットがありますが、エサや排泄物によっていけすの水質が悪化しやすく、水質管理の技術が不可欠だ。日本特殊陶業は排気ガスセンサーなどで培った技術を基に、水中のアンモニアを検知するセンサーを開発し、水質の自動管理システムを構築する計画だ。また、自動給餌システムや汚れた水のろ過システムを組み合わせて、エビの陸上養殖の自動化を目指している。

 スパークプラグもエビも見た目はそっくり。日本特殊陶業なら、必ず成功するはずです。

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