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滑り落ちる日本のスキー市場 固定ファンと外国人が支えるが、スポーツ用品店から存在感は消える

 スポーツ用品の量販店、アルペンを創業した水野泰三さんは、23歳で独立しました。名古屋市に開いた第1号店はご本人が大好きなスキーを中心にしたウインタースポーツ関連の用品を揃えました。1972年のことです。

1987年の「私をスキーに連れてって」がピーク

 アルペンは1980年代、スキーブームに乗って全国展開をスタートしました。スキーブームは1987年11月に公開した映画「私をスキーに連れてって」の大ヒットでピークへ。スキー場には若者、家族連れが押し寄せ、ゲレンデでリフト前に並ぶスキーヤーの列は信じられないほど。数十分待ちは当たり前でした。長い列の途中に割り込むスキーヤーも多く、ケンカ騒ぎも。

 アルペンは1990年代、スキーブームが沈静化した後はゴルフ用品など幅広い商品を扱って全国に400店舗を超えるチェーンに成長しています。2023年6月期の売上高は2445億円、営業利益は50億円。しかし、スキーやスノーボードなどのウインター関連の売り上げは全体の3%を超える程度。今や、アルペンでスキー用品を買おうと考えたら、販売している店舗を探さなければいけないのが現状です。「スキーは衰退するスポーツ」。痛感します。

あのアルペンでもスキー売り場はわずか

 「今ごろ、買おうと思っても手遅れですね。6月の早期受注会などでほとんど完売状態」。かつてはスキー用品のメッカといわれた神保町のスポーツ用品店のスタッフから申し訳なさそうに言われました。ただでさえ日本のスキー人気はすたれている時にコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻で欧州のスキーメーカーが生産計画を抑制。欧米に比べて縮小する日本への製品供給を後回しにしているそうです。

 スキーブーツ、ウエアはほぼ受注生産の状況に近いそうです。連日35度を超える猛暑のなか、10年近く使用したスキーやブーツの買い替えに向けて品定めしようと考えていた私は、ほぼ茫然自失。

 日本のスキー市場の変化は毎冬、ゲレンデに行くたびに体感していました。とにかく日本人スキーヤーが激減しています。若者のスノーボード人気は相変わらず強いのですが、スキーを練習する風景は学校主催の修学旅行が目立つ程度。スキーとスノーボードを楽しむ人は1990年代の4分の1程度に落ち込んでいるそうです。

外国人スキーヤーは日本人を上回る?

 その一方で外国人のスキーヤーがどんどん増えています。北海道や長野県の有名スキー場へ行くと、5割は外国人が占めている感覚です。私が毎年通っている北海道のスキー場は最北地に近く、地元スキーヤーがほとんどでしたが、「今は半分が外国人」とゲレンデのレストランを運営する男性は苦笑していました。

 神保町の大手スポーツ用品店でも、同じ風景でした。スキーを購入するお客さんの多くは外国人。「初心者向けのスキーやブーツは、手堅く売れ続けていくはず」と異口同音にスポーツ用品店から聞きました。地球温暖化の影響もあって欧米のスキー場の雪不足が続き、雪質が良い日本のゲレンデは欧米、中国、タイなどアジア各国からスキー客が訪れています。とりわけ雪に経験がほとんどないアジアの観光客にとっては、冬のスキー場は未体験ゾーン。経済成長と共に海外旅行が増えているわけですから、初めてスキーを楽しむ気持ちはわかります。

SNOWは京都、ヒロシマに並ぶ

 ニセコは世界のリゾート。これから北海道や長野県ではミニ・ニセコが増えるのでしょう。日本の観光資源として世界で高い人気を集めるのは、京都やヒロシマに続き、雪(SNOW)が並ぶ日がもう訪れているのかも知れません。 

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