福島・大熊町の坂上ダムで

原発は、多くの批判を集めて安全性を高めていくしかない

自民党議員が原発推進を否定

脱原発が持論の自民党議員による講演が自民党内でひと悶着を起こしたそうです。千葉選出の秋本真利衆院議員が「自民党発!『原発のない国へ』宣言」の出版記念として水戸市で講演会に出席しました。実行委員会には水戸市民グループや野党系を含む地方議員が参加していたそうです。茨城県は日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働問題を抱えています。自民党茨城県連は実行委に立憲民主党などの地方議員が参加していることを問題視し、秋本議員の講演辞退を二階俊博自民党幹事長に申し入れ、二階幹事長は秋本議員に「原発の話は一切しない」と約束する文書を県連幹部に提出するよう指導したそうです。

ことの顛末や自民党内の力関係は横に置き、ここでは原発を巡る賛否について触れたいです。もう40年近い前から北陸の原発建設の反対運動、東京電力など電力業界を長年取材した経験から明確に浮かび上がるのは、原発を推進する側は積極的にわかりやすい説明を繰り返す姿勢が欠かせないということです。原発建設地の住民ら多くの人が原発に対する不安を抱えるのは当然です。「推進」「反対」をぶつけ合うシーンがクローズアップされがちですが、国や電力会社は「安全だと説明するが、農水産業への影響、事故の場合の避難対策などに納得できない」という不安が根っこにあります。反対のための反対は数少なく、取材する我々にとっても素直な疑問と思えるものばかりでした。

東電副社長 「原発の批判、大歓迎」 批判が安全性を高める

1990年に取材した当時東京電力副社長の依田直さん(後に電力中央研究所理事長、原子力委員に)は「原発に対する意見、批判はどんどん寄せ欲しい。多くの疑問に回答することが原発の安全性を高めるのだから」と率直に話していました。福島原子力発電所の事故調査報告でも「絶対安全神話の罠」を指摘していますが、「原発は安全と説明しているので、改善点が必要になっても言い出せない」という空気が原子力ムラには出来上がり、対外的な説明では「原子力の専門家に任せて欲しい」という傲りともいえる姿勢が生まれたのです。それが原発に対する不安を解消せず漠然とした不信だけが自治体、住民に強く残り、経産省内ですら東電に対する不信感を醸成させ、原発の安全性を高める施策につながらなかった一因です。だからこそ依田さんが公言したように原発に対する批判や不安は常に指摘されなければいけないのです。

国が脱炭素を目指して原子力発電を日本にとって欠く事ができない柱と据えている今こそ、多くの批判や疑問が必要です。脱原発の持論を持つ衆議院議員一人の口を封じることは、大震災以後の原発の全ての道を封じてしまっていることに気づいて欲しいですね。

 

 

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