A世代の社会 移動はAuto Pilotが支配、人間は娯楽に夢想するだけ

 もうひとつの「A」を夢想したいと思います。Autoです。autoは自動車を意味しますが、イメージするのは「Auto pilot」。情報技術関連で商品名として使われている実例がありますが、航空業界で使われている自動操縦の意味をここでは使います。多くの計器をチェックしながら、飛行機の昇降などを動かすパイロットの負担を軽減するために早くから開発、進化しており、現在は電波誘導装置、自動着陸装置なども備え、パイロットが最も神経を費やす離着陸時などでコンピューターが多くのデータを処理しながらサポートしています。

航空業界で自動制御 

 航空機の事故の過半はパイロットなどの人為的ミスで発生しています。ヒューマンエラーと呼ばれるミスをゼロにするため、自動操縦は航空機の開発で最も重要なテーマとなっていますが、設計思想はボーイング、エアバスそれぞれ違っています。ボーイングは咄嗟の判断が求められる緊急回避時、コンピューターよりパイロットの操縦を優先するのに対し、エアバスはヒューマンエラーを極力抑える狙いからコンピューターの制御を優先します。

 航空機は熟練したパイロットがコンピューターと”対話”しながら安全運航を実現するわけですが、自動車の自動運転も人工知能(AI)にすべてを委ねるわけではありません。現在の自動運転は、カメラなどで集めた周囲の状況を判断しながら、車線変更や目的地の進路選択など実現しているレベルで、運転の判断は運転者が全て決めています。

EVの人工知能化は加速

 しかし、電気自動車(EV)の普及と開発の進展と共に、インターネットも活用したカーナビゲーションの完成度が高まれば人工知能の仕事量は運転者の負担を減らす方向で増えていきます。航空機のプロフェッショナルであるパイロットと違い、EVの運転手はベテランばかりではありません。自宅の周辺ならともかく、長距離ドライブの場合は疲労が溜まり、それに伴い事故の可能性が高まります。自動車の「Auto pilot」が航空機並みの安全信頼性に達したら、人間の状況判断よりも優るであろう人工知能に運転を任せた方が良いとEVメーカーも考えるでしょう。

航空機の操縦席

 EVの進化は地上の移動に留まりません。2023年10月に開催したジャパン・モビリティショーをみても、ホンダやスバルは空飛ぶEVを発表しています。主催者の自動車工業会が制作した近未来を描いた動画でも、地上を走るEVの頭上を滑走する飛行モビィリティが飛び交っています。移動手段が地上を離れ、滑空するモビリティに進化すれば、地上を走るEVよりはるかに多いナビゲーションに関するデータ量を瞬間的に処理できなければ、安全な移動は保証できません。

空飛ぶEVは人工知能任せへ

 頼りは人工知能しかありません。人間は航空機のAuto Pilotと同様、滑走と滑空の制御を任せることになります。

ホンダとソニーのアフィーラ

 ホンダとソニーが開発するEV「アフィーラ」を思い出してください。運転は人工知能がほぼ制御する自動運転に切り換わり、車内空間は音楽や映像、ゲームなどエンターテインメントの世界で満たされます。乗客は夢の世界に浸り、飛び去る車外の景色は目に映ることはないでしょう。あるいは車内のガラスは映像で埋め尽くされ、車外の風景は全く見えないかもしれません。

運転を忘れ、乗客は夢幻に酔う

 運転は人工知能、人間は夢幻に酔う。移動そのものが根底から覆される。人工知能(AI)、Auto Pilotによる移動が当たり前と受け止める社会は、かつてSF映画やマニメでしか”体験”したことがない人間にはとても”夢の到来”とは思えません。

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