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政治家のみなさん、新しいリーダー像を探してみませんか? 立憲民主党の代表選に期待します。

立憲民主党の枝野幸男代表が2021年末までに退くことになりました。10月末の衆院選で現有議席を減らす惨敗を喫した責任を取ります。同党の創業者として「枝野一強」と言われる強い指導力を発揮して共産党との共闘などをまとめたのですから、衆院選の惨敗の責任を負うのは当然です。しかし、衆院選の結果を見る前にすでに勝負は決していたのではないでしょうか。コロナ禍の対応、政策立案力、国会や党内議論の進め方を振り返れば、過去9年間の安倍・菅政権時代に呆れ果てたとはいえ、国民が立憲民主党を信任するわけがないです。コロナ禍でわかったのは日本の政治家の説明能力と発信力の欠如です。政治家のみなさん、国民が新しいリーダー像を求めていることに気づきませんか。

枝野代表の露出度、低いと思いませんでしたか

枝野氏の失敗はコロナ禍の真っ最中に明確になっていました。コロナ禍に対する発言が著しく少ないことです。これは後付けではありません。みなさんも気付いていたはずです。立憲民主党のスポークスパーソンは安住淳国会対策委員長、福山哲郎幹事長の両氏いずれかがメディアに登場していました。両氏ともマスコミ対応に慣れているうえ、党の考え方をわかりやすく説明できるとはいえ、この2年間で最大の国難であるコロナ禍に直面した現在、最も問われるのは指導力です。野党第一党の代表として正面から斬りかかる気迫が欲しかった。

相対する自民党は安倍、菅両首相が記者会見などでコロナ対策を説明します。党首イコール首相ですから当然です。その説明内容や様相の良し悪しは横に置いて、国民の目から見て時の首相がコロナ対策を述べるのに対し、野党には実は影の内閣って過去にあったと思いますが、首相に相当する党代表が現れずにナンバー2、ナンバー3の人間が政府の対策について注文をつけるのはどう見ても奇妙です。

維新の会、公明党、いずれも巧みです。

議席を3倍以上増やした日本維新の会もメディアの露出度が押し上げた要因です。代表は松井一郎大阪市長、副代表は吉村洋文大阪府知事です。自治体の首長はコロナ対策で毎日、テレビや新聞、ネットで登場するのは当然です。大阪府・市で維新の会が圧勝するのはこれまた当然です。しかも、大阪府の吉村府知事は良くも悪くも話題を振りまいていましたから、全国ネットで映像と発言が流れます。しかも、元代表の橋下徹さんはテレビやネットでほぼ連日発言を繰り返します。弁護士とテレビタレントで高い人気を集めて大阪府知事選に手を挙げ、維新の会の創業者です。枝野さんとは正反対。テレビなどメディアに頻繁に登場することにアレルギーはあるわけがありません。立憲民主党は維新の会のマスコミ戦略は一度しっかりと検証して学んだ方が良いです。

議席減の可能性も予想された公明党の山口那津男代表も負けていません。仕事柄、多くの集会などを取材しましたが、公明党の山口代表はこんな小さな集会でも顔を出すのと思うぐらいこまめです。公明党をアピールした後、必ずといって良いほど「私も選挙で選ばれる身です。その時はぜひ山口と書いてください」と加えます。このきめ細かな露出作戦と低姿勢には頭が下がりした。

枝野さんはどうして「自分は党の顔だ」と前面に出なかったのでしょうか。露出度が低いと不思議に思いませんでしたか?私はテレビに映し出されるのが嫌で新聞記者の道を選んだ人間です。カメラの前に立つとどうも落ち着かなくなります。同じかどうか分かりませんが、政治家のリーダーとなった以上はマスコミに露出するのは避けられませんし、橋下氏のように逆手にとって利用しなければ多数決で決まる民主主義の政治制度で勝ち残りことはできません。

マスコミの露出を子細に検討するだけでも、今回の衆院選の結果が説明できるような気がするぐらいです。菅前首相の突然の辞任もそうです。記者会見に求められる資質は官房長官と首相では大きく違います。例えば英国のジョンソン首相を見てください。EC離脱を唱えて首相の座を獲得したわけですが、EC離脱として説明した理由は的外れと多くの学者から指摘されていました。内容よりも揺るがぬ自信の姿勢を崩しませんでした。ところが菅前首相は原稿を棒読みし、質問する記者を真正面から見ようとしません。官房長時代は影の実力者として政権の舞台裏で政府や官僚を牛耳っていれば誰も批判はしませんが、首相には国民に理解してもらう資質が欠かせませんし、努力する姿勢が必要です。ところが菅前首相は今年夏以降は目がうつろでした。昨年の安倍首相も辞任を発表する前日、同じような目をしていました。

マスコミの露出度に終始してしまうのは、今回の衆院選は政策論争があったのかと思うほど与野党は同じ内容を言い合っている印象だったこともあります。立憲民主党の枝野さんは政権交代を繰り返し演説していましたが、多くの国民はそこまで風を感じていなかったはずです。議席減の背景には共産党との共闘で議論になった日米安保条約に対する考え方が大きく影響したとの解説もありますが、投票する際に念頭にあったとしても次の次の選挙でしょう、が実感でした。

次のリーダーは説明する力、国民に理解してもらえる力を

枝野さんに代わる立憲民主党のリーダーが誰になるのかはわかりません。しかし、わかっていることがあります。国民に対し説明する力、それも声の大きさや身振り手振りではなく、なぜ実行するのかをきちんと説明できる材料を示し、語れることです。コロナ対策を説明し、国民に多くの負荷を求める記者会見で首相の隣に専門家が立ち、「詳しい説明は尾見さんに」では納得できません。尾見さんがなぜ担当大臣にならないのか不思議でした。

2022年は参院選があります。立憲民主党が野党第1党の地位を守るためにも次の代表選はとても重要なはずです。ぜひ多くの国民が納得する人材の選び方、そして人材を担いで欲しいです。そうすれば自民党や公明党、維新の会のリーダー選びにも波及するはずです。私たちも政治家を見る目がより厳しくなり、選り抜く力が養われます。そういう視点から立憲民主党の代表選には期待しています。

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