南太平洋 ⑥ ブーゲンビル島 鉈(ナタ)1本あれば熱帯樹林で生活できる
川で身体を洗ったことがありますか。川の流れを背に受けながら石鹸を片手に持って身体をゴシゴシ。川幅は5メートルくらいで、手ごろな大きさの岩がゴロゴロ。背中を上流に向ければ水の流れは気持ち良い感覚で身体に当たり、すり抜けように遠ざかります。水量はたっぷり、自然のジェット水流を楽しめます。石鹸の泡が身体に残る心配はまったくありません。目の前には青空が大きく広がります。ああ、快感!
ブーゲンビル島で過ごした生活を再現してみます。
場所はパプア・ニューギニア東部、ソロモン諸島との国境沿いにあるブーゲンビル島アラワ地区。この島には世界最大級の埋蔵量といわれるパングナ銅鉱山があり、ブーゲンビル地域で長年続く独立運動はこの鉱山の利権についてもパプア・ニューギニア政府と敵対し、銃弾が飛び交う争いが繰り広げらていました。PKO(平和維持活動)の実験的な試みとしてオーストラリア、ニュージーランド、フィジー、トンガ、バヌアツが参加した南太平洋平和維持軍が結成され、1994年10月ブーゲンビル島アラワに治安回復を協議する場として中立地帯を設定しました。
この地区には鉱山会社が管理する住宅など公共インフラがありましたが、鉱山は閉鎖され会社の住宅も廃屋に。島の人口は3000人近いのですが、平和維持軍が設定した中立地帯は事実上、廃墟だけが残る地域です。ガス、電気などライフラインも途絶えています。平和維持軍からは「取材で島を訪れるなら、1週間分の食料のほかテントや寝袋など寝食できる準備を整えて来るように」との警告されていました。言い換えれば「軍を頼りにするな!」ということです。