
森林ファンド浮上 ESG投資の復権に投資効率、グリーンウォッングが課題
「森林ファンド」が再び脚光を浴びています。
二酸化炭素(CO2)の吸収源である森林への投資は、気候変動対策に直接的な効果があるうえ、なによりもESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs(持続可能な開発目標)を重視する経営を株主や投資家にアピールできます。
気候変動は進行中
今夏、連日35度の酷暑日に苦しめられ、地球温暖化の進行を直に体感しているだけに、森林ファンド拡大は大歓迎。欧州では記録的な高温に襲われ、死者や農業被害が発生。一つの街が消えるほどの大洪水に巻き込まれたたネパール・中国の大惨事とあちこちで地球が悲鳴をあげており、地球温暖化の元凶の一つであるCO2の吸収、削減は急務であることに議論はありません。
ところが、森林ファンドを含むESGを巡る投資はここ10年間を振り返っても、礼讃と批判の繰り返しです。ESG投資は欧米が先行して、日本が後を追う構図で拡大し続けていました。世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは「運用先を選ぶ最大の指標はESGへの取り組み」と公言し、ESG投資の流れをリードしました。
2025年1月に第2次トランプ政権が発足後は一転、批判に襲われます。トランプ大統領が環境保護を「フェイク」と蹴散らし、CO2を排出する化石燃料である石油、石炭、ガスの資源開発を推進します。共和党を中心にESG投資は期待通りの投資効率が上げらないとの声が米国に広がり、それが欧州に飛び火。リーダー役を自任していたブラックロックのフィンクCEOに対する批判はどんどん高まり、ついにフィンクCEOは軌道修正を余儀なくされました。
もっとも、トランプ大統領が自ら推し進めた政策が混乱の極めの様相を示している通り、ESG投資の不人気ぶりが投資ファンドとしての機能を否定しているわけではありません。
復権への課題は・・・
むしろ、気候変動を少しでも抑制するためにも、なんとか森林ファンドはじめESG投資の復権に努める時です。
その実力を改めて検証しなければいけません。どの程度あるのでしょうか。結論から言えば、「適切な管理と厳格な認証が伴えば高い実効性を持つが、現状は制度や科学的測定の穴が多く、不確実性が高い」というのが実態です。実効性を高めるためには多くの課題があるのは事実です。
まずメリットを列挙してみました。
- ESGをアピールできる=気候変動対策(SDGsの目標13)や陸上生態系の保護(目標15)に直接貢献できることを対外的訴え、社会貢献を無視できない機関投資家にとっては資金を組み入れやすい。
- 安定した経済的リターン=木材需要は、建築の構造材として再評価され始めており、木造建築の需要は高まっており、木材はインフレに強い実物資産として安定したリターンが期待できます。
- カーボンクレジットの創出=森林の成長に伴うCO2吸収量をクレジット化し、自社の排出量相殺(カーボンオフセット)や市場での売却に利用できます。
以上の3点を説明すれば、環境保護と資産運用が美しく融合しているように見えるビジネスモデルを設定でき、強欲といわれかねない投資への批判を交わすことができる。ここが人気を集める理由です。
課題はどうでしょうか。
- 永続性のリスク=せっかく植林した森林も、近年の地球温暖化に伴う大規模な山火事や、病虫害、違法伐採などによって失われれば、吸収したはずのCO2が再び大気中に放出されてしまいます。数十年単位での「永続性」を担保することは極めて困難です。
- 生物多様性への配慮不足=CO2吸収効率だけを重視し、単一の成長が早い外来種(ユーカリなど)ばかりを植林するファンドも存在します。これは一見、脱炭素に貢献しているようで見えて、現地の在来種の生態系を破壊し、生物多様性を損なうという本末転倒な結果を招きます。
- 企業の「免罪符(グリーンウォッシング)」化するリスク=最も深刻な懸念です。森林ファンドやそこから生まれるカーボンクレジットが、企業の「免罪符」として悪用されるリスクです。
まずは企業の努力が最優先
本来、企業の脱炭素へのアプローチは「 自社の排出量を徹底的に削減する(省エネ、再エネ導入など)」「どうしても削減できない残余排出量をオフセットする」という順序(緩和階層)でなければなりません。森林クレジットを購入すれば、自社の工場やサプライチェーンの構造改革という「痛みを伴うコスト」を支払うことなく、手軽に「ネットゼロ達成」をアピールできてしまいます。
なんとも皮肉なことですが、森林ファンドが気候変動対策として機能するためには、企業のESG、SDGsに対する意識がカギになっているのです。森林ファンドが有効に活用されるためには、「企業の開示基準の強化」が不可欠です。投資家も企業に対し、「自社の直接排出をどれだけ減らしたか」という内訳の開示を厳しく求めるようになっています。
森林への投資は、正しく運用されれば地球の未来を救う強力な武器になります。だからこそ、実効性を厳しく監視し、見極める目を持つ必要があります。
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