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スバルEV「TrailSeeker」試乗 軽やかに雲上を走るも「らしさ」は道半ば

 スバルが2026年4月に発売した電気自動車(EV)のSUV「TRAILSEEKER(トレイルシーカー)」を試乗しました。わずかな時間と距離しか体感できませんでしたが、もう30年以上もスバル車をマイカーとして運転してきた経験を踏まえ、身勝手な思い入れも込めて簡単な感想を綴ってみます。

車重2・2トンがスッと走る

「あれ!、とっても軽やか」。思わず声が出ました。試乗車は「ET-HS」。レザーシートなど上級装備を纏った4輪駆動車です。最大出力は280kwとエンジンに換算すれば380馬力。車両重量は2・2トンですが、アクセルを軽く踏むだけでスッと走り出します。車の重みは全く感じません。トヨタ自動車の「ランドクルーザー」並みの車重ですから、その軽やかさに驚くしかありません。

「想像の上を走る、BEV。」とカタログに大きく書かれていましたが、雲の上を走る感覚に近い驚きです。趣味のスキーに例えれば極上のパウダースノーを滑走しているイメージにそっくり。とても気持ちが良い。出力が高いモーターが2トンを超える車重を全く感じさせない「軽やかな走り」を演出しています。

 軽いといっても軽自動車や小型車の軽さとは違います。軽くジョギングする感覚でしょうか。車名「トレイルシーカー」はトレイル・ランニングのレースでトップを走るランナーと重ね合わせているのかもしれません。

 ただ、走り始めてまもなく他のEVとの違いにも気づきました。これまでテスラ、VW、ホンダの軽EV、そしてスバル・「SOLTTERA(ソルテラ)」を試乗しましたが、トレイルシーカーはいずれのEVとは異なる走行感覚です。

 EVは車体下部に重いバッテリーを搭載しているため、エンジン車に比べ低重心となり、路面に吸い付く感覚がわかります。テスラはいかにもEVらしく路面にピタッ。ソルテラも、水平対向エンジン搭載のスバル車よりも車輪が路面をしっかりと捉えているのが伝わってきました。

 これに対し、VWとホンダはエンジン車に似た走りというのでしょうか。低重心に変わりはないのでしょうが、サスペンションなど駆動系の反応を自社らしい走りの味付け、いわゆるテイストを重視して設計しています。

どんな悪路でも走破するEVをめざす

 EVを選ぶ場合、航続距離を左右するバッテリー性能にどうしても注目しがちですが、これまで走り慣れているエンジン車の感覚を大事にしたいドライバーは多いはず。自動車メーカーがEVでも「らしさ」を重視して開発する発想は当然です。

 スバルの場合はどうでしょうか。元々、水平対向エンジン搭載でライバル車に比べて低重心に設計しやすいため、どんな悪路でも走破する最強の四輪駆動が「スバルらしさ」です。30年以上もスバル車を愛用している経験からいって、嘘偽りはないと実感しています。スキー場に向かう凍結した山道で他の4WD車がフラフラしていても、スバル車はその脇を通り抜ける余裕があります。

 トレイルシーカーもカタログを開けば、「道を選ばない余裕の走り」「天候や路面状況を選ばず、いつでも安心感を持って運転できる」とスバルらしさを表現する言葉が登場します。EVに転身しても、スバルらしさは守り続ける覚悟がよくわかります。

 ただ、「こんなテイストに変えるんだ!」という違和感は試乗中、消えませんでした。ソルテラは初めてのEVとあってあえて水平対向エンジン車の感覚を残したいと考えたせいか、四輪駆動車に乗る感覚をより強調していた印象でしたが、トレイルシーカーはとても軽やか過ぎて、まるでセダンを運転しているよう。森林や草原などのトレイルを駆け抜けるクルマに仕上がっているとわかりますが、これまでのスバル車の走行感覚と異なる印象が消えません。

 誤解しないでください。過去のスバル車が素晴らしいので、その反動でEVを否定しようと考えているわけではありません。トレイルシーカーによってスバルはどんな自社の新しい走行感覚を知って欲しいのかが理解できないだけです。

 EV時代の「スバルらしさ」とは何か。まだ試行錯誤が続いているのではないでしょうか。

 スバルは4年前の2022年4月、EV第1号「ソルテラ」を発売しましたが、スタート当初からエンスト。トヨタ自動車が主導した共同開発車だったせいか、スバルのテイストは中途半端。発売後すぐに、車輪を取り付けるハブボルトの不具合でリコールが続き、受注は一時中止。アピールする場面がほとんどありませんでした。

「SubaruSeeker」は始まったばかり

 トレイルシーカーはスバルの開発陣が深く関わり、スバルテイストに仕上げたと聞いています。ソルテラのエンストもあり、失敗できません。ただ、ソルテラとトレイルシーカーのテイストは真逆。それだけにトレイルシーカーでスバルしか到達できないSUV型EVの走りを描きたかったとの強い思いを感じます。

「SubaruSeeker」は走り始めたばかり。試乗後の感想です。

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