
K-POPは半導体と同じ?BTSもやっぱりサムスンと同じ宿命?問われる市場創造力
韓国のBTSが2026年4月、兵役に伴う休止期間を終えて3年半ぶりに7人が揃い、フルメンバーによるワールドツアーを開始しました。韓国で13万人を集め、日本、北米、欧州、南米で85公演を予定しています。これまで溜まりに溜まったマグマが一気に噴き出すかのようです。音楽やダンスは超一流ですから、熱狂的なファンが多いのも頷けます。1990年代から韓国が音楽やドラマなどコンテンツビジネスを国策として推進してきた成果がBTSの世界戦略でも花開いているのでしょう。
韓国の国策が花開く
国策としての視点でみると、BTSから違った風景が見えてきます。朝日新聞が4月14日付記事で「BTSの帰還『今がピーク』 韓国記者が語る『K POPへの疲労感』』で興味深い分析を紹介していました。ワールドツアーに先立つ3月、3年9カ月ぶりのアルバム「ARIRANG(アリラン)」を発表しましたが、韓国のジャーナリストらにBTSの立ち位置と評価を訊ねています。
新しいアルバムは、米国のビルボードチャートで、アルバム、シングルともにトップに駆け上がる人気で、ソウルの公演はNetflixを通じて190以上の国と地域に配信されています。新譜には民謡「アリラン」などのメロディーやオマージュを取り入れており、世界的な人気を博しながらも韓国のイメージを前面に出しています。
朝日新聞によると、歌詞の大半が英語だったこともあって「K-POPではない」との不満も出ているそうです。ただ、公演は韓国のみならず日本、北米、欧州、南米と世界一周するのですから、世界共通語の英語で歌うのも当然でしょう。韓国の伝統舞踊をヒントにしたキレキレのダンスが人気の一つですから、BTSが演じるワールドそのものが新たな「K-POP」のベクトルを指し示しているはずです。
「いまや韓国においてK―POPは半導体と同じように国威発揚を担う産業。BTSはその足がかりをつくってくれた」と韓国の通信社ニューシスで長くK―POPを担当するイ・ジェフン記者は言う。
韓国のジャーナリスト、イ記者が指摘する通り、韓国経済の成長を支えている半導体産業と並べても遜色ありません。韓国の半導体産業は1990年代、日本から学んだ技術をもとにサムスン電子などが政府の強力な後押しを受けて巨額投資を決断、日本を追い抜き世界トップの半導体メーカーに駆け上がりました。エンターテイメントで世界の頂点を駆け上がるBTSと重なります。
サムスンは東芝、アップルを追随する戦略
ただ、サムスン飛翔の歴史から見逃せない”宿命”があります。自ら市場創造した製品開発がほとんどありません。経営戦略の真髄は、他社が開拓した市場に後発として参入し、圧倒的な力で世界シェア1位を勝ち取る「ファスト・フォロワー(追随者)」。インテル、東芝、アップルが切り開いた半導体、スマートフォンを参考に圧倒的な投資で開発・生産能力を高め、抜き去る力技をみせつけました。液晶でも、先駆のシャープを蹴散らしています。
仮にBTSがサムスンと同じ道を歩むとしたら、とても残念。圧倒的な技術力だけ見たら、BTSはサムスンに負けません。再び舞い戻ったフルメンバーが世界に新しい金字塔をどう築き上げるのか。マイケル・ジャクソンがダンスとポップミュージックを融合してステージのみならずネットの映像コンテンツを新たな市場として創造した歴史を超える活躍を見たい。半導体産業の二の舞だけは演じて欲しくありません。
もっとも、日本は今や、エンターテイメント、コンテンツ、半導体などで韓国の背中を遠くから眺める立場にあります。妬まずにBTSのパフォーマンスを楽しむことに徹するつもりです。

