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日本のEV戦略 石油危機に背を押され大転換?、それともハイブリッドで落ち穂拾い

  電気自動車(EV)が息を吹き返し始めています。引き金は米国のイラン攻撃に伴う中東産石油の不安。世界でガソリン価格などが急上昇し、一時停止していたEV市場に勢いが回復しました。石油の需給が安定したら再びEVは立ち往生、追い風は一時的とみるかもしれませんが、仮にEV市場の拡大が続いた場合、価格競争力で勝る中国勢に世界のEV市場で主導権を奪われるのは間違いありません。ハイブリッド車を優先する日本車メーカーは、中国勢などが取りこぼした市場の「落ち穂拾い」に甘んじるリスクを抱えています。

中国勢が主導権を握るEV

 EVを押し上げる追い風は一時的でしょうか。世界情勢を鳥瞰してください。4年目を迎えたロシアのウクライナ侵略、中国の台湾有事を巡る緊張、そして米国・イスラエルによるイラン攻撃で一気に悪化した中東情勢と続けば、激動する現状があっさりと収束すると楽観視するのはちょっと難しいでしょう。

 現実の石油事情を確認してください。原油の先行き相場であるWTIは1バレルを100ドルを超えた後も相場は大荒れです。米国とイランの停戦交渉の推移によって乱高下していますが、90ドルを挟んで振れています。原油が100ドルを超えたのはほぼ4年ぶり。2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻に中東情勢の深刻化が加わり、6月には120ドルまで迫る水準まで高騰しました。

 石油・ガスを産出する中東地域、ロシアに異変があれば、敏感に乱高下することがわかります。どう考えても、ガソリンなど石油製品の価格高止まりは続くと覚悟するしかありません。

 すっかり記憶から消えているかもしれませんが、地球温暖化を抑制するために温室効果ガスを削減するカーボンニュートラルも避けて通れません。自動車は航空、鉄鋼、電力と並び、CO2を大量に排出する産業です。世界各地で戦争が勃発している中でカーボンニュートラルといわれても、燃焼機関のエンジンからEVへ切り替えても実効はあるのかという素朴な疑問は消えませんが、次世代の自動車はEVが主役を演じるはずです。

東南アジア、欧州で回復

 読売新聞によると、東南アジア各国で石油不足に備える省エネの一環としてEVの注目度が上がっているそうです。タイやインドネシアの新車販売でEVが急増しており、BYDなど価格が割安な中国勢が好調に伸びています。

 EVが足踏みしていた欧州でも回復基調です。ドイツは3月のEV販売台数が前年同月比1・7倍の7・1万台に急増。英国はEVは24%増の8・6万台と過去最高を記録しました。ガソリン価格が高騰し、高止まりする可能性と予想して燃料費を抑制できるEVにハンドルを切り始めている傾向がはっきり出ています。

 日本車メーカーがEV市場で立ちすくんでいるわけではありません。3月以降、EVの新車投入が相次いでおり、水平対向エンジンがアイデンティティのスバルでさえ本格的なSUVタイプ「トレイルシーカー」を発売しています。ただ、EVの本格投入はこの3年間を振り返っても、中国や欧米に比べても出遅れているのも事実です。

ホンダはハイブリッドに回帰

 収益の柱はあくまでもハイブリッド車。脱エンジンを掲げていたホンダでさえEV事業で巨額の損失処理を計上に追い込まれた結果、経営戦略を大幅に軌道修正して改めてハイブリッド車に注力することを表明しています。

 確かにハイブリッド車は頼りになります。EVに比べて価格が安いうえに充電の手間もない使い勝手の良さから、欧米はじめ世界で着実に売れています。トヨタ自動車が高収益を維持できるのも、ハイブリッド車の頑張りがあるからです。

 しかし、先は見えています。ハイブリッド車依存を続けている限り、これから拡大するEV市場で中国や欧米に価格や性能競争で振り回される結末が待っています。次第に縮小するハイブリッド車需要で細々と生きていくわけにはいきません。トヨタやホンダが落穂拾いで食い繋いでいる姿は見たくありません。

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