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ニデック挫折の教訓 ② 社外取締役は「張子の虎」経営陣の暴走は止められない

 ニデック創業者の永守重信氏の暴走ぶりを改めて検証すると、どこかで経験した既視感を覚えます。紅麹素材で甚大な健康被害を引き起こした小林製薬と瓜二つでした。

健康被害を放置した小林製薬と瓜二つ

 紅麹素材による健康被害は2014年に欧州で報告され、日本でも注意喚起されていましたが、小林製薬は2016年に事業化、2021年から主力製品を発売。健康被害の訴えが広がったにもかかわらず、小林製薬は2024年3月に自主回収を発表するまで販売を継続しました。

 医薬品メーカーとして安全安心は絶対に譲れない企業倫理ですが、まったく無視。背景には創業家・小林家出身者が経営の全権を握り、絶対的な権威が発する命令に逆らえない企業風土がありました。

 小林製薬は早くから社外取締役制度を採用するなど「取締役会改革の優等生」といわれていましたが、皮肉にも紅麹素材による健康被害を巡る不祥事は優等生企業の社外取締役制度がまったく機能していないことを暴き、小林製薬の社外取締役も批判を浴びました。

第三者委員会は社外取締役の機能不全を認定

 ニデックでも社外取締役は機能せず、無力を曝け出します。第三者委員会は調査報告書で認定しています。

当委員会がヒアリングを行った社外役員の中で、ニデックにおける強い業績プレッシャーの存在が不正を引き起こす原因であると認識していた者はいない。また、社外役員は、当委員会のヒアリングにおいて、一様に、永守氏の経営理念を反映して、ニデックにおいて高い業績目標が掲げられ、その達成が強く求められていたことは認識していたと述べているが、それが非現実的なものであるとの認識を有していた者はいない。また、社外役員には、「負の遺産」の問題は共有されておらず、当委員会がヒアリングを行った社外役員の中で、ニデックが長年にわたり「負の遺産」の問題を抱えていたことや、その解消のための取組が資産健全化プロジェクトや構造改革の名の下で行われてきたとの認識を持つ者はいない。

 第三者委員会は不正会計処理の根源は創業者の永守重信氏が社内全体が震え、慄いた「過度なプレッシャー」にあると断罪していますが、なんと社外取締役は「過度なプレッシャー」を非現実なものと認識していなかったのです。

 不思議です。社外取締役はニデックと取引や資本関係のない外部から選ばれ、経営陣から独立した立場で監督、助言するのが責務です。経営の透明性、不正防止をめざすコーポレートガバナンスを保証するうえで株式上場企業では義務化されているほどです。当然、「過度なプレッシャー」とは無縁な存在。

 2026年3月時点の社外取締役をメンバーをみてみます。取締役会は10人で構成。社外取締役は7人と過半数を占めています。このうち4人は財務省や外務省など霞ヶ関の官僚出身。残る3人は大学教授が2人、弁護士が1人。選任にあたって永守氏のメガネに叶った人物とはいえ、優秀な人材ばかりです。ただ、企業経営の裏表に精通しているかどうか。永守氏も自身の経営判断に異論を挟む人材を認めないでしょうし、元々求めていないはず。

 第三者委員会も、社外取締役制度そのものの限界を認定しています。

最も強力に対向できるのは、経営陣の指揮下にある社内の監督・牽制機能ではなく、法的に裏打ちされた権限を持つ社外取締役だからである。しかし、これは「言うに易し」の面がある。月に一度の取締役会に出席し、時折社内の会議体にオブザーバー参加することで、企業が抱える問題点を見抜くのは容易なことではないし、仮に企業の抱える問題を認識したとしても、取締役会で問題提起し、事業に精通している経営陣と対等に対峙することも容易なことではない。これは、問題が、ニデックの業績目標追求の在り方のような、企業の事業遂行の根幹にかかわる事項であればなおさらである。

 もっとも、第三者委員会は、ニデックが再生するカギは社外取締役の機能強化と考えています。調査報告書では社外取締役について「社外取締役に経営経験者や会計専門家を入れ、その多様性を確保したとしても、『忖度なく是々非々で経営陣の監督・評価をしてくれ』と言うのは、やや無理難題を要求している面があることは否めず」と優しい気配りをみせる点には笑ってしまいますが、それが現実なのでしょう。

 だからこそ、機能強化の処方箋はきめ細かく、とてもやさしくアドバイスをしています。

 社外取締役に入る情報の質を上げ、社外取締役が活動する上で必要なサポートを提供し、社外取締役、特に監査等委員を務める社外取締役が、社内外の監督・牽制機能と連携できる体制を整えることが必要である。情報の質という点では、経営陣や監督・牽制機能を果たす部門が、真に課題と考え、その解決に頭を悩ませている問題こそ、整理の上、社外取締役に情報提供する必要がある。(中略)必ずしも専属のスタッフを設置するまでの必要はないが、社外取締役が必要とするときに適時にサポートを提供できる人員体制を整えておく必要がある。また、社外取締役自体が、必要に応じて弁護士をはじめとする専門家の意見を聞くことのできる体制を整えておくことも有益ではないかと思われる。

 苦笑せざるを得ないのは、提言の中ですら社外取締役の機能不全を仕方がないと認めていることです。

社外取締役は、法的には強い権限を持っているが、現実は異なる場合も少なくないと思われる。経営陣への遠慮・忖度から、社外取締役の心の中に、是々非々で問題提起することを躊躇う気持ちが生じるのは、社外取締役も人である以上、避けることはできない。

 やっぱり社外取締役は張子の虎と諦めるしないのでしょうか。

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