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民主党投票を求めるニューヨーク・タイムズ ネット全盛の今「新聞の価値」を突きけられる

 米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ」が11月3日の中間選挙に向け「民主党に投票すること」を呼びかけています。

 10月27日付で「トランプは失敗した。責任を問う」と題した社説を新聞紙、電子メディアに掲載しました。長文の記事を要約すると、「有権者はトランプが選挙公約を守らず、民主主義を傷めた。露骨な汚職も直視し、権力の濫用を許す共和党の責任を問うべきです」と現在の政治情勢を厳しく批判した後、民主党への投票を呼びかけます。

トランプ政権を否定する最善の策

 ただ、民主党を絶賛しているわけではなく、あくまでも次善の策としての選択。「今日の民主党は多くの欠点がある。一貫した政策・行動を提示できず、失望してしまう失敗がある」と冷静に見詰め、それでも「米国民が過去2年間のトランプ政権の業績を否定する最善の方法」と主張します。

 トランプ大統領がイラン攻撃など議会や世論の意向を無視するかのように政策を実行することについても触れています。「独裁へ進む国をハンガリーで今春起こったように正常化できる」と訴え、中間選挙後にトランプ政権の権力を大幅に奪う召喚状などの手続きを具体的に綴っていました。行間からは「王様はいらない、民主主義を取り戻せ」という叫びが聞こえてきます。

 社説自体に驚きはありません。互いに対立する関係だけに、ニューヨーク・タイムズがトランプ大統領の政策を阻止するために民主党へ投票するよう呼びかけることは予想されました。ニューヨーク・タイムズはトランプ大統領にとって忌み嫌う存在です。「国家安全保障の深刻な脅威」「国民の敵」と激しく非難するとともに、記者の取材を阻止する措置が相次いでいます。

欧米の新聞は政党機関紙が起源

 しかも、欧米の新聞は元々、18世紀ごろを起源に政党や政治グループの機関紙として普及しており、明確な主義主張を前面に出す特性があります。その後、新聞事業を拡大するために部数や広告を増やすため、「中立公正」を謳いましたが、あくまでも建前。メディアとしての個性は政治的な立ち位置で判断されています。

 「中立公平」を掲げる日本の新聞社の編集局で長年、記者、デスク、部長、局次長とキャリアを積んできただけに、選挙のたびに支持政党を旗幟鮮明に示す米国の新聞にはいつも注目していました。ネット全盛の今、素朴な疑問が募ります。

 オールドメディアとして影響力を失っている新聞の社説が有権者の投票行動にどの程度の影響を与えるのか。天に唾する思いですが、新聞としてのメディアの存在感、言い換えれば多くの国民から注目される価値がどのくらいあるのか。直近のブラジル大統領選をみると、劣勢と言われた現職のルラ大統領はSNSの活用で予想を覆しました。日本でも高市早苗首相の高い支持率はネット市民に支えられています。

新聞の部数減は止まらない

 もっとも、「中立公正」の看板を掲げる日本の新聞の社説はニューヨーク・タイムズと比べるまでもなく、とても歯切れが悪い。どのくらいの読者が注目しているのでしょうか。もう30年ほど前、社説を執筆する論説委員の1人が「新聞購読者数の5%が読んでいのかどうか」と寂しい胸の内を明かしていました。

 以来、新聞の影響力は確実に失われています。SNSなどネットメディア拡大に伴い新聞の部数減は歯止めがかからず、30年前に1000万部超えを豪語していた読売新聞でさえ500万部前後と半減しています。

 読者層は高年齢層が主体で、若い世代はネットしか注目していません。社説の読者は30年前の5%をはるかに下回る低い数字まで落ち込んでいるはずです。「社説」は新聞社の社論としての役割を担っており、少数でも読まれていれば良いと割り切ることもできますが、それでは自己満足にすぎません。

伝統的な手法であえて勝負

 ニューヨーク・タイムズは早くから紙媒体に囚われず電子メディア化に挑み、フェイスブックなどSNSを活用する新聞社として進化、好業績を上げています。そのニューヨーク・タイムズが紙媒体の頃から踏襲する「社説」を前面に出してメディアとしての存在感を訴えています。伝統的な記事コンテンツで勝負する姿勢を見ると、改めて「新聞の価値」とは何かを突きつけられた思いです。

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