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公認会計士協会がPwCを調査 ニデックとの「馴れ合い」は氷山の一角 

 日本公認会計士協会がニデックを担当する監査法人PwCジャパンの調査を始めました。ニデックでは巨額損失を見逃すなど監査法人の信頼を揺るがす会計不正事件が発覚しており、PwCジャパンの監査手続きに過失がなかったかどうかを精査します。

調査は極めて異例

 PwCジャパンは巨額赤字を計上したニデックの2025年3月期と26年3月期の2度も有価証券報告書に対する監査意見として「意見不表明」を提示しました。株式上場企業として、まして高収益を達成し続けて東証を代表する優良企業の代名詞でもあったニデックが2度も「意見不表明」となるのは、極めて異常な事件でした。

 公認会計士協会は、株式上場企業が公表する有価証券報告書の信頼性が失われ、資本市場に甚大な影響を与えると捉え、調査を決断したのでしょう。会計士業務で問題が発生した場合に審査する制度がありますが、活用するのはこちらも極めて異例な措置です。仮に会則などの違反があったと判断すれば懲戒処分が提案され、戒告や会員権停止、退会勧告、さらに金融庁に行政処分などの処置をとるよう勧告することもあるそうです。

「PwCはいい気になっている」。今回の異常事態は、この言葉にすべてが集約されています。2026年10月にニデックが公表した役員責任調査委員会の報告書において、創業者の永守重信氏の発言や関与が認定されていますが、永守氏はPwCジャパンに対して不満を持ち「いい気になっている」と批判していたことが判明しています。

ニデックとは長年の付き合い

 ニデックとPwCジャパンは、馴れ初めからみて「企業の言い分」を伝えやすい関係にあったとみて良いでしょう。

 元々、ニデックの会計監査法人は京都を地盤にする「京都監査法人」でした。前身は中央青山監査法人の京都事務所。中央青山は2005年に巨額粉飾決算を起こしたカネボウ事件の会計監査法人だったため、解体に。

「京都監査法人」は京セラ創業者の稲盛和夫氏が京都発祥の企業の安定した監査業務を維持する狙いで支援、設立されました。その後、世界的な会計事務所のPwCグループの傘下に入り、現在のPwCジャパンに名を変えます。

 経済界の重鎮である稲盛氏が後ろ盾として控えているだけに、京都で日本電産(現ニデック)を創業した永守氏にとっても、他の監査法人に比べて距離感は近く、緊張関係も違ったのでしょう。

 おっと!勘違いしないでください。長年の付き合いだからといって、不正行為を見逃したのだと言っているわけではありません。京都出身の企業は京セラはじめ不正会計に手を汚したことはありませんし、当然ですが不正行為の責任を負うのはニデックであることは間違いありません。

 見落とせないのは、ニデックとPwCの「馴れ合い」の構図が監査される企業と監査法人の間で長年の慣行となっている恐れがないかどうかです。

 会計監査法人が手を抜いているというわけではありません。ただ、会計監査法人の経営環境は激変しています。デジタル時代を迎え、監査、経営コンサルティング、税務・法務を軸に多岐にわたり、会計事務所のビジネスモデルは進化していますが、会計監査は今も大きな経営の柱であり、有力企業の顧客を失うわけにはいきません。

監査は巨額報酬

 監査業務は巨額な報酬が伴います。中小企業、大企業などによって異なりますが、トヨタ自動車など世界で事業展開する企業は10億円を超えます。ニデックの場合は、2015年3月期から2024年3月期までは5〜6億円で推移し、2025年3月期は9億7700万円とほぼ倍増しています。監査証明業務の3億6400万円が上積みされたためです。

 当然、ライバルが虎視眈々と狙っています。顧客と衝突してまで監査過程を杓子定規に進めることができない場合があるのです。「馴れ合い」「見逃す」までいきませんが、会計処理がグレーゾーンと判断できる場合は、それ相応の理屈付けによる解釈によって正当な会計処理と捉えることがあります。

 新聞記者として会計監査法人を取材した経験からいえばニデック同様、恫喝などで監査の判断を歪めた事例を知っています。会計監査法人はPwCに並ぶ大手会計監査法人でした。監査報酬をエサに無理難題を押し付けるだけでなく、会計監査法人が対外的にひた隠す問題を交渉材料にしたようでした。どんな組織も叩けば、埃が出てきます。

 あってはいけないことですが、不正会計を見て見ぬふりをする会計監査法人がいたとしたら、企業の財務諸表に対する信頼は雲散霧消します。米国では2001年、石油大手エンロンの粉飾会計事件で名門のアーサー・アンダーセンが解散、消滅しました。

 ニデックとPwCジャパンの馴れ合いは氷山の一角としか思えません。高収益企業を演出する不正会計の誘惑に駆られる企業は尽きることはないでしょう。そういえば、PwCジャパンは営業担当者が顧客から31億円を詐取したプルデンシャル生命の監査法人でもありました。しっかりと精査されなければいけない暗部があるのかもしれません。

これまで以下の連載を掲載しています。ご一読ください。

◆ ニデック挫折の教訓 創業者・永守重信氏の功罪から学ぶ

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