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GMOと不正アクセス 被害者への非難に沸くネット世論の不可思議

  •  微塵の思い入れもないせいか、奇妙な大炎上がとても不可思議に映ります。GMOインターネットグループを巡る不正アクセス事件に端を発した創業者の熊谷正寿会長兼社長に対する非難の高まりです。

GMOは犯罪の被害者

 不正アクセスはGMOの「お名前.com デスクトップクラウド」で発生、身代金の要求をはじめ情報流出、FX口座の不正取引などで顧客の資産が毀損されました。不正アクセス事件は、NTTドコモ、KDDI、三井住友銀行、アイリスオーヤマなど通信、金融、小売りと幅広い業種で膨大な顧客情報が流出するなどの被害が出ていますが、ネットサービス大手のGMOのセキュリティが突破されただけに、サイバー攻撃の深刻さが改めて浮き彫りになりました。

 すでに顧客情報の漏洩やFX取引の被害が確認されており、警察は犯罪事件として警察が捜査する一方、GMOは不正アクセスを見逃した落ち度を認め、早急な対抗策や再発防止策を急いでいます。

 不正アクセスを許してしまったGMOのセキュリティ対策については、グループ企業から脆弱性が指摘されているにもかかわらず、「2年以上も放置されていた」と批判され、熊谷会長も対応の不備を認め、謝罪しています。

 ただ、見落としてはいけないのは、GMOは被害者という事実です。自らのネット事業を介して顧客情報を悪用し、金銭を横領したり詐取したりしたわけではありません。誰かは知りませんが、どこかに存在する加害者が放置されていたGMOのセキュリティの脆弱性を発見し、GMOを貶めようとした構図です。

 ところが、不正アクセス事件に対するネット世論の視線は異なる構図で眺めているようです。GMOや顧客に対する金銭的な被害は傍に置かれ、熊谷会長ら経営陣の危機管理、ガバナンスに対して厳しい批判と冷ややかな目が浴びせられ、果ては熊谷会長の私生活まで俎上にのり、不正アクセスを許した一因と批判されています。いわゆる、ネット大炎上の有様です。

大炎上は謝罪会見が引き金

 大炎上は11月2日の「謝罪会見」の振る舞いが引き金になったようです。

 熊谷正寿会長らによる3時間半に及んだ記者会見は被害者への対応よりも、熊谷氏の言動が注目を浴びました。「命の砂時計(自身の死生観)」を連呼し、涙ながらにAIの脅威や経営理念を熱弁しました。不正アクセス事件に関する記者会見でありながら、自己陶酔、劇場型といった感情的な表現で受け止められる内容と批判されました。

 立ち振る舞いも稚拙でした。スライドの不手際で社員を叱責したり、役員に「上着のボタンを閉めなさい」と促します。典型的なワンマン経営の弊害」「部下との異常な上下関係が透けて見えて怖い」の声がネット上で飛び交います。

 不正アクセスを許してしまった背景には2年前から警告されていた脆弱性の放置していたことも加わって「トップに重要なリスク報告が上がらない組織構造そのものが問題」とガバナンス体制の形骸化にまで批判は及びます。

 不正アクセスの被害を招いた元凶が経営者の資質、ガバナンス体制にあるとするなら、GMOだけでなくNTTドコモ、KDDIなど不正アクセス被害企業に名を連ねたすべての企業も問われるべきです。

 驚くのは、熊谷会長のこれまでの派手な私生活にまで非難が広がったことです。高額なマンションに住み、ビジネスジェットやヘリコプーターを自ら操縦して「カニを食べるために飛んだ」など具体的に指摘されます。2000年代のITバブル経済で躍り出た経営者がタイムマシンに乗って蘇ったかのような声もありました。

 確かに熊谷会長は1991年にNTTの音声情報サービスダイヤルQ2で創業、普及が始まったばかりのインターネット通信事業にも手を広げ、GMOを大企業に育て上げて株式上場しました。ITバブルの体現者であるライブドア創業者の堀江貴文氏は熊谷氏を評して「考え方がバブルで、令和の人たちからすると『何この会社?』みたいな感じだと思うが、彼らはあれが平常運転」と解説していますが、その通りでしょう。

強烈キャラの起業家否定は損失

 誰も成し遂げていない事業を立ち上げ、モノにする創業者とは、そんなものじゃないでしょうか。ZOZOTOWNの創業者、前澤友作氏の言動に比べたら、熊谷氏はまだ物足りなく映りませんか。仮に言動が気に食わないとしても、経営者のキャラクターを理由に不正アクセス事件の被害者を非難するのはお門違い。

 むしろ、米国のイーロン・マスク氏に到底及ばないとしても、熊谷氏や前澤氏のような強烈なキャラクターで創業する経営者がもっと増えた方が日本経済にとって利益になるはずです。誰にも批判を受けない優等生の経営者ばかりとなったら、日本経済は再び沈滞、今度こそ泥沼から抜け出せません。
 GMO、熊谷会長のキャラクターを楽しみながら、世界で活躍する日本発のネットビジネスを育てる。ネット世論の人々にとっても幸せなはずです。

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