
ディスコ「働きがいのある会社」第1位 製造業の人材育成でも独創力、就職人気のITやコンサルに圧勝
半導体の研磨・切削装置など精密加工メーカーのディスコ。日本を代表する高収益企業として株式市場で常に注目を浴びる有名銘柄ですが、従業員のやる気を引き出すために独創的な人事制度を運用していることでも知られています。技術開発にも人材開発にも先駆的な挑戦を続ける。関家一馬社長が世界の経営者の中でも高い評価を集める所以です。
ITやコンサルを押さえてトップ
2026年「働きがいのある会社」の従業員1000人以上の企業部門で第1位に選ばれました。GPTWジャパンが企業の働きがいを世界共通の基準で評価し、「日本における働きがいのある会社」ランキングを年1回発表しています。従業員の力をどのように伸ばし、育成するのか。企業にとって技術開発と並ぶ最大の経営課題だけに人事関連の調査は多くありますが、GPTWのランキングでもぜひ注目して欲しいポイントをみつけました。
何が凄いかって? 製造業でありながら、就職ランキングで上位を占める情報技術(IT)やコンサルタントなどを押さえ、トップに躍り出たことです。
「働きがいのある会社」ランキングのトップ10をみると、第1位のディスコに続く9社は、上位順にシスコ、セールスフォース・ジャパン、ヒルトン、ラクス、ノースサンド、メットライフ生命保険、SmartHR、Plan・Do・See、日本ヒューレット・パッカード(HP)。トップ10のうち製造業はディスコと日本HPの2社だけで、2位から9位までは情報技術、ホテル、コンサルタント、外食といった非製造業が占め、日本HPは第10位でようやく顔を出します。
しかも、ディスコはシスコ、セールスフォース、ヒルトン、ヒューレット・パーカードという世界企業のブランドを押さえてのトップ。10位以下をみても、やはりサービスなど非製造業が続き、ようやく第15位で半導体メーカーのマイクロンメモリージャパンが顔を出すぐらい。製造業が「働きがいのある会社」としての評価を得る難しさがわかってもらえますか?
製造業のハンディキャップを超える
製造業は開発、生産、販売と多くの業務に分かれ、工場など生産現場ではパートタイムなど正社員以外の非正規雇用が加わり、雇用体系が複雑。給与も部門別にかなり差異が生まれます。とりわけ工場勤務はいまさら労働組合の歴史を振り返るまでもなく、会社と従業員で給与、職場環境の改善を巡って不満が渦巻く職場です。
アップルを思い浮かべてください。開発や設計などに特化して、生産は台湾など海外に委託しています。もう改善されたと思いますが、中国工場の劣悪な労働環境が大きく取り上げられた時期もあります。製造業はどうしても生産現場の負のイメージが広がっているせいか、「働きがいのある会社」として評価される時にハンディキャップを背負っている印象もあります。
例えばニデック。小型モーターなどで世界に飛翔し、株式市場を左右するとまで言われた高収益企業でしたが、不正経理がきっかけで「過剰なプレッシャー」の下で働くブラック企業という汚名を被ってしまいました。「製造業ってこんなもん」と勘違いされたら困ります。
ITやコンサルタントなどはどうみてもスマートに映ります。ランキングのトップ10に名を連ねた会社のHPを眺めてください。クリーンでデザイン家具が並ぶオフィスが映し出され、いかにも楽しげに働く風景があります。工場現場とは全く異質の空気が漂っています。
もっとも、ディスコが第1位に選出されること自体に驚きはありません。もう何十年前に広島県呉市の工場で当時の関家一馬取締役にお会いして、その後に工場内を回りながらパート勤務の従業員のみなさんとお話しました。パートのみなさんは口を揃えて「アイデアや改善は現場の意見に耳を傾けてくれるので、やりがいがある」と笑いながら教えてくれました。関家社長の人懐っこい性格なら、今も変わりはないでしょう。
経済産業省などが選定する「健康経営優良法人(ホワイト500)に9年連続で認定されているのも不思議ではありません。高収益を支えに高い年収を維持し、男性の育休取得や社内の託児所設置などで性別を問わず「働きやすい環境」を整えています。
「Will」など挑戦を促すチャンスを提示
従業員のやる気と挑戦を引き出す社内通貨「Will」も効果抜群です。通貨「Will」を交換することで自身の評価と成果を冷静に見つめ、自身が責任を持って新たな業務に挑むチャンスを創造。社内全体の改革も加速する一石二鳥の相乗効果を生み出しています。「Will」は一例に過ぎません。関家社長は「やりがい」を引き出すというよりも、従業員の不満を徹底的に排除する経営手法を重視していますが、狙い通り「働きがいのある」に実を結んでいます。
かつて英エコノミスト紙が「2023年のベストCEO5人」としてエヌビディアのジェンスン・ファン、メタのマイク・ザッカーバーグの両氏と並んで関家社長を紹介しましたが、その眼力に狂いはなかったようです。

